どくとるマンボウ

文学

   どくとるマンボウの愛称で有名な北杜夫が84歳で亡くなったそうですね。
 医学博士であり小説家であり双極性障害(躁うつ病)患者でもあった、わが国文学界の言わば異端児でした。

 
北杜夫です。

 躁が激しい時に株取引で破産も経験しているとか。
 躁状態時に金遣いが荒くなることはよく知られています。
 私も半年程度の激躁時、ずいぶん無駄遣いをしました。

 マンボウ・マゼブ共和国として日本国家からの独立を勝手に宣言したりして、奇行で有名でもありました。

 私は「楡家の人びと」のようなシリアスなものは好まず、「どくとるマンボウ航海記」などのどくとるマンボウものを好んで読んだ記憶があります。
 それまでのわが国文学には珍しい、ドライなユーモアにあふれた作品でした。

 でもなんと言っても私が彼に親近感を抱いているのは、彼もまた私と同様中年になってから双極性障害を患ったとのことで、同病相哀れむの類で彼の動静を注視していたからでした。

 双極性障害というのは不思議な病気です。
 当初私はうつ状態となり、うつ病と診断されましたが、その後、上司からのパワーハラスメントで弁護士を立てて抗議したことがきっかけで、寝なくても平気、やたらと徹夜で駄文を書き散らす、大金を平気で使う、喧嘩っ早くなる、などの躁状態が現れ、双極性障害に診断が変わったのでした。

 躁状態にある時は元気になったとしか思わず、まるで病識がないのですが、躁状態が終わってみると、酔いから覚めたように冷静になり、よくもあんな怖ろしいことをしたものだ、と反省するわけです。
 幸い私は躁状態は一度しか経験していませんが、もうあんないつも何かにせきたてられているような状態を経験したくありません。

 古代ローマ時代から躁うつ病に使われている炭酸リチウム(リーマス)が私には合っているようで、血中濃度も安定しており、躁状態も現れません。

 北杜夫のすごいところは、躁状態であってもうつ状態であっても執筆を続けたことでしょう。
 同病者の星とでも言うべき作家が亡くなったことは、誠に残念です。

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)
北 杜夫
新潮社
楡家の人びと (下巻) (新潮文庫)
北 杜夫
新潮社
どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)
北 杜夫
新潮社

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