2009-10-13

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文学

死の文学

文学と死は、なんと離れがたく、抱き合っていることでしょう。 あまたいる自殺をとげた文学者。 あるいは情死。または孤独死。自衛隊の決起を促して死んだ文学者もいました。 文学者が死を甘美なものと捉え、そこから抜け出せなくなるのは、故なしとしません。死は未知であり、死を求める者の心に従って、自在に変化し、その魅力的な姿を現します。 私は、精神の病を患い、渇きにも似た切羽詰った心で、自死を模索したことがありました。しかしそれを実行しなかったのは、死は、私にとって魅力的でありながら、あまりに恐ろしいことであったからです。狂気のなかに、わずかに正気が残っていたのでしょうか。 そして今にいたるも、情けなく、生き残っています。 自死をとげた原民喜に、「夏の花」という小説があります。 自身の被爆体験を描いた小説です。 悲惨な被爆地の状況と、被爆者の切ない心情を描きながら、その文章はあまりにも美しいのです。 戦後最も美しい散文と、評されたほどです。 いわば死にいく他者と、死に抵抗する我を描いた小説で、それはまさしく、死の文学です。 もっとも痛ましい状況を、もっとも美しく歌わずにおられなかった作家の心情を思...
映画

REC

昨夜、DVDでスペインのパニック映画「REC」を観ました。 「ヴレア・ウィッチ・プロジェクト」や、「クローバーフィールド」等と同様、登場人物の視点のみから撮影された映画で、この種のもののなかでも、特に迫力がありました。  2007年。スペイン、バルセロナ郊外。ローカルTV局の若い女性レポーター、アンヘラはカメラマンと共に消防隊の密着取材をしていた。 深夜、老婆の叫び声を聞いたという通報を受けて現場アパートに急行すると、そこにはこの世の者とは思えぬ老婆の姿があった…。その後、突如、封鎖されるアパート。その中で拡がり出す“ある病原菌”。閉ざされた空間で、究極の恐怖に直面することとなった人々には、隠れ、逃れ、必死に生き残ろうとする以外、術がなかった。 次第に露わになる謎、明らかになるほど増していく恐怖の出来事を克明にカメラはとらえ続ける。女性レポーターとカメラマンが最後の一瞬まで記録しようとしたもの。それは、逃げ場のない、戦慄の事実。 私は、いわゆる日本浪漫派の文学を専攻しました。そこには、常にこの世ならぬ物への予感が描かれています。  三島由紀夫の「美」。能の「幽玄」。「源氏物語」に代表さ...
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