文学 電話男
今、インターネットの普及によって見ず知らずの人とコミュニケーションをとることは、当たり前になっています。 今から26年前、1984年に書かれた「電話男」は、電話によって赤の他人たちとのコミュニケーションを図り、それによって彼我ともに癒される存在を描いて秀逸です。 電話男(電車ではありません)は、日がな一日電話の前で、悩める人々からの電話を待つのです。 それはテレクラのような会うことを目的としたものではなく、ただ電話があり、電話男がいて、電話が鳴るのです。 彼らは闇の存在ですが、同じく闇に住むテロリストの標的になっていきます。 対面でのコミュニケーションを阻害する不逞の輩として。 人とのコミュニケーションを求め、それがはかないことを知って絶望する、そして、テロリストに狙われる。 今日のインターネット社会を凌駕する切なくて残酷な物語が、ユーモアを交えつつ加速度をつけて展開されます。 これは某文芸誌の新人賞を受賞しましたが、ずいぶん評価が分かれたそうです。 しかし時代は「なんとなく、クリスタル」だとかニュー・アカデミズムだとかが流行っていました。 斬新なものが受け入れられる素地があったのでし...