お笑い 逆説
「クレタ島人が言うことは全て嘘である」と、あるクレタ島人が言いました。これは嘘、本当。 髪の毛が一本もない人は禿げ。一本植えても禿げ。二本植えてもはげ。ふさふさになるまで植えたら禿げじゃない。じゃあ、禿げの定義は? ここに落書きをするな、って壁に書いてあったら、それは。 人生を幸福にするためには、日常の瑣事に苦しまなければならぬ。 文明は神秘主義に長足の進歩を与えるものである。 以上はそれぞれ有名な逆説的ユーモアです。 頬笑み、嘲笑、失笑、爆笑、哄笑、艶笑、照れ笑い、人様に笑われる。 笑いに色々ありますが、私は逆説的ユーモアを好みます。 中でも出色なのが、落語「粗忽長屋」です。 浅草で大酒を食らって仲見世あたりで凍え死んだ男が、自分が死んだと気付かずに長屋に帰ってしまいます。 そこへ浅草帰りの隣家の男が、「お前、死んでんだぞ、死人らしくしろいっ」と叱って、「ああ、俺死んでんのか」といって自分の遺体を取りにいきます。人だかりのなかを、本人です、本人です、と言ってかき分けて、死体を担いで長屋に戻っていく、というなんともシュールな話です。 「薔薇の名前」では、コメディーを禁書にした中世の...