文学 ワイセツな俳人
「どうもワイセツだからもう一度生やしてください」 男が見てワイセツなら、女が見たら― と私は慄然として、また口髭を培養した。 俳句界きってのダンディな紳士または好色漢、西東三鬼の自伝的作品「神戸」に見られる記述です。 口髭を剃ったら顔がワイセツだと言うんですから、どれだけ好色な人だったのでしょうね。 恋人が35人いたとか、よく知らない看護師に子どもがほしいから種だけくれと頼まれて実際に父になったとか、にわかには信じがたいエピソードが残っています。 かくし子の 父や蚊の声 来たり去る 前述のエピソードを知った上で想像すると、怖いですねぇ。 恋猫と 語る女は 憎むべし 憎むべしだなんて、お上手。猫好きな女とも関係していたようです。 中年や 遠くにもれる 夜の桃 なんとも香り高い、エロティックな句ですねぇ。いい年をしても、女色は止められなかったようです。 趣をがらりと変えて、 水枕 ガバリと寒い 海がある 西東三鬼自ら、この句を得たことで俳句の眼を開いた、と言った句です。 高熱の中、うなされながらひらめいた句というだけあって、どこか不気味な、異界へ通じるような海の迫力が感じられます。 海に関...