文学 文学=幻想文学?
1999年、ノストラダムスによれば空から恐怖の大王が降りてくるはずでしたが、何事もなく過ぎ、代わりに平野啓一郎という若い作家が鳴り物入りで芥川賞を受賞しました。 「日蝕」という中世フランスの神学僧が体験する神秘的な出来事を格調高い擬古文で描いて見事でした。 それまで若い作家のデヴュー作というと、若者風俗小説みたいなものが多かったので、とんでもない天才が表れた、と騒がれたものです。 三島由紀夫の再来とか言われていましたね。 その後も明治末、山中で毒蛇にかまれた美青年が夢とも現ともつかない体験をする幻想譚「一月物語」など、佳作を連発しています。 この人の小説を読んでいて、私はかねてから思っていたことが確信に近づきました。つまり、幻想文学と文学はほぼ同義ではないか、ということです。 古来、物語は神話から始まって、鬼や化け物や妖怪が跳梁跋扈する世界でした。 貧乏くさい私小説でさえ、心の中の妄想を書きすすめれば、現実にはあり得ない幻想世界が現出します。 わが国の古典文学は説話にしろ和歌にしろ能にしろ、みなこの世ならぬものへの憧れなくして生まれえないものです。 そこで、平野啓一郎の言葉。 芸術作品...