2011-10-11

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文学

モンスターフルーツの熟れる時

私は当代の小説家では、小林恭二を最も偏愛しています。 「電話男」でのデヴュー以来、奇抜でエキセントリックでどこか切ない物語世界を紡ぎだしてきました。 中でも、「モンスターフルーツの熟れる時」は、ある到達点に達しているものと思われます。 渋谷猿楽町を舞台に、めったやたらに性交を繰り返す女や、妖しげな店を経営する女など、4つの物語が同時並行的に語られます。 やがてその4人は幼馴染であり、子ども時代に「わたし」が交わしたある約束を実現するため、ある者は霊となって、またある者は美を実現した女神となって、「わたし」の下に集います。 彼らは言わば、「わたし」の使徒。 そして「わたし」が約束した将来の夢とは、破壊の王になること。 破壊の王となって、ヒトラーですら成し遂げられなかった、「我々は世界を焼き尽くす」という夢を実現すること。 ここに、大人に成りきれないモラトリアム人間の悲哀を見るのは、うがち過ぎでしょうか。 その夢は、プロ野球選手になりたい、とか、宇宙飛行士になりたいとかいう、少年の日の戯言に過ぎません。 しかし「わたし」は、大真面目に、その野望を果たそうとするのです。 絶対に実現不可能な夢...
その他

中村芝翫、死去

歌舞伎女形の大看板にして人間国宝の中村芝翫が亡くなりましたね。 83歳、今年の夏まで舞台を務めていたとのことで、歌舞伎役者としては最高の死にざまではないでしょうか。 化粧が映える端正な顔立ちで、女形のトップでした。 長男は中村福助、二男は中村橋之助、義理の息子が中村勘三郎と、そうそうたる成駒屋の総領でした。成駒屋の紋です。 歌舞伎を見に行くと、市川團十郎や市川海老蔵の成田屋などとならんで、成駒屋の粋な掛け声が聞かれました。 なりたやっ、なりこまやっ、と短く声援を送るのが粋とされていましたが、時折女子大生などが、なりこまやーなどと、間抜けな掛け声をかけて、客席から失笑が漏れるのも、近頃の歌舞伎ではご愛敬になりました。 建築中の新しい歌舞伎座の舞台に立ちたかっただろうと思いますが、十分に芝居をして、ほっとしているのではないでしょうか。 自身の芸を語った本や、自伝も出版した文筆家でもありました。 ご冥福を祈ります。芝翫芸模様中村 芝翫,小玉 祥子集英社福家族―神谷町物語中村 芝翫ベネッセコーポレーションにほんブログ村 ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
思想・学問

あぁ、やれん

昨日「猿の惑星 創世記(じぇねしす)」を観ていて、つくづく人間を始めとする霊長類は、争いごとが好きなのだなぁと感じました。 考えてみると人間のやることと言えば、食うための労働と、子孫を残すための生殖と、おのれもしくはおのれの同族全体の欲望を満たすための争いに終始しているように見えます。 どんな小さな組織でも、小さな権力闘争やら出世争いがあり、しかも人はそういう話が大好きですね。 物語といえば生殖のためでしかないはずの男女間の恋愛を描いたものと、戦国絵巻のような権謀術数渦巻く争いのものばかり。 NHK大河ドラマがもっぱら戦国時代や源平の争乱、幕末など、乱れた時代を題材に選ぶのは、視聴者が殺し合いや権力闘争の話を好むからに他なりません。 どうせ放っておいても死ぬ者同士が、敵だからとか拝む神様が違うからという理由で殺し合うとは誠に愚か。 Love&Peaceのような、理屈もへったくれもなくひたすらに平和を願う運動が流行ったり、反核平和教のようなものが戦後日本社会を席捲したのもゆえなしとしません。 マクロの視線で世の中を見れば、無責任とも言える平和主義が、至極もっともに思われます。 しかしミク...
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