文学 旅のラゴス
私は筒井康隆が書いたものをほとんど読んでいますが、じつは最も気に入っているのは、「虚人たち」のような実験的な文学作品でも、「東海道戦争」のようなコメディ調のSFでも、「時をかける少女」のようなSFジュブナイルでもありません。 筒井康隆としては異色の作品、「旅のラゴス」を最もよしとします。 文明を失った代わりに、様々な超能力を身に付けた人々が住む世界で、ひたすら旅を続けるラゴス。 旅の途中、王になったかと思えば奴隷になったり。 親しい人ができても、彼はその人と別れて旅を続けます。 別れ際、いくらなじられようと、ラゴスは旅を続けざるを得ないのです。 旅を描いた日本文学のなかでは、渋澤龍彦の「高丘親王航海記」にならぶ名作です。 「高丘親王航海記」がどこか乾いた幻想文学だとすれば、「旅のラゴス」は感傷的な要素を含んだ哲学的な作品です。 なにゆに彼は旅を続けるのか。 その旅に目的はあるのか。 よくわからないまま、短編の連作という形で、少年だったラゴスが成長し、老いていきます。 ポイントは、ラゴスの旅ではなく、旅のラゴスであるという点。 人生を旅に喩えるのは古来よく行われてきたことですが、この作品...