文学 ここの港に寄りもせず
何年前になりますか、浅草から水上バスに乗って東京湾を一周する春の休日を持ったことがあります。 浅草の船着き場は当時、木材でできており、いつポキッといってもおかしくなさそうな、頼りなげな風情でした。 そういえば浅草に観光客向けの人力車があんなに増えたのはいつの頃からでしょうね。 30年前、私が子どもの頃はまったく見かけませんでした。 それと、煮込み横丁。 昼日中から酒を飲ませる店はいくらもありましたが、煮込み横丁のような、観光客でも外国人でも気楽に入れるお店なんてありませんでした。 これも時の移ろいでしょうか。 あるいは、わが国に外国人観光客が増えたのでしょうか。 春白昼 ここの港に 寄りもせず 岬を過ぎて 行く船のあり 若山 牧水 一説には、三浦半島を詠んだ歌だと伝えられます。 旅が好きで、沼津が気に入って移住したというくらいですから、三浦半島なんて目と鼻の先だったのでしょうね。 牧水先生の歌を、うますぎる、とか、きれいすぎる、と言って嫌う向きもあるようですが、私は近代歌人の中では随一の歌よみだと思っています。 旅人と言う者、常...