文学 けんか大岡
今日は大岡昇平の忌日なんですよねぇ。 私が大学生の、1988年の今日でした。 「野火」や「レイテ戦記」などの戦争を扱った作品を、冷静な筆致で描き出し、夢中で読んだことを思い出します。 この人、けんか大岡と呼ばれるほど、論争好きで有名でしたね。 有名どころでは、井上靖との間で繰り広げられた、「蒼き狼」論争があります。 大岡昇平と言う人は嘘八百を並べるのが仕事のはずなのに、奇妙に実証にこだわる面がありました。 で、井上靖が独特の浪漫的美学を盾に、モンゴルの英雄を狼に見立てて史実を捻じ曲げたと怒りだしたわけです。 他にも、井上靖の自伝的三部作「しろばんば」・「夏草冬濤」・「北の海」を、自伝とは言えない、と文句を付けました。 そして「少年」という自伝的作品を書いてこれらへの批判としたそうです。 私は少年時代、井上靖の自伝的小説を耽読しました。 大正時代を舞台とした青春小説で、少年から青年へと成長していく姿が、若い男特有の滑稽さとともにユーモラスにつづられていました。 嘘八百を並べるという小説家の宿命を考えれば、私は大岡昇平の言いがかりに与することはできません。 井上靖の大らかな文学世界を良しと...