文学 星に願いを
昨日は七夕でしたね。 織姫と彦星が年に一度逢瀬を楽しむ日。 そして私たちにとっては、星に願う日。 願い事は人それぞれでしょうが、ロマンチックな伝説に彩られた一夜、切実な願いを抱えている人もいるでしょう。 私はといえば、しがない木端役人の中年男ですから、願い事といっても宝くじが当たりますように、程度の、俗っぽい願い事しかありません。 神聖な短冊をそんな世俗の垢にまみれた願い事で汚すわけにはいかず、曇り空の向こうに輝いているであろう二つの星に、心の奥深くで欲望が叶うことを願いました。 天の川 遠き渡りに あらねども 君が舟出は 年にこそ待て 歌聖、柿本人麻呂の和歌です。 「和漢朗詠集」に見られます。 天の川はそれほど大きな川ではないけれど、一年にたった一度の渡りを待ち焦がれています、と言ったほどの、織姫の切ない恋情を表したものと思われます。和漢朗詠集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)三木 雅博角川学芸出版 その昔は短冊ではなく、梶の葉に願い事を書いたとかで、与謝蕪村は、 梶の葉を 朗詠集の しをり哉 と詠んでいます。 七夕の夜、「和漢朗詠集」を繙いて、和漢の古人を友として一時の慰めを得た...