文学 死後の恋
心中というと、相愛の男女がその恋の至純であることを証し、さらには来世で結ばれることを願って一緒に自殺する、というのが一般的な概念かと思います。 その他には、生活苦などから家族で同時に自殺する一家心中。 さらには子供や、老いた親などを殺して、後に自殺する無理心中などがあります。 相愛の男女による心中を美化するような文学作品もありますが、一般には許されざる行為です。 死んで花実が咲くものか、と申します。 生きていればこそ、結ばれる時もくるでしょう。 目の前の愛欲に惑わされ、ヒロイックな自己陶酔に陥って、男女が一緒に死ぬなど、他人から見れば滑稽でしかありません。 しかし死に逝くその間際に、恋しい人への想いを形にする、となるとまた話は別でしょう。 大正から昭和にかけて活躍した、幻想的な作品を得意とした夢野久作の短編に「死後の恋」というものがあります。死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫)夢野 久作新潮社 革命の嵐が吹き荒れるロシア。 ウラジオストックで、キチガイ紳士と呼ばれる元ロシア貴族を自称する男。 この男が駐留していた日本軍の将校に独り語りする、という形式で物語は進みます。 夢野久作独特...