文学 不道徳ゆえに価値が上がる?
かつてナチは、多くの近代美術作品を押収し、ドイツ全土を巡回して退廃芸術展を開催しました。 これは、表現主義、抽象絵画、新即物主義、ダダイズム、シュルレアリスムなど、20世紀美術の主要な動向にかかわる作品群を、退廃芸術として弾圧し、晒し者にすることを目的としたものです。 この展覧会は多くの観客を集め、現代にいたるも、これ以上の観客数を誇った展覧会は、ドイツでは開催されていません。 しかしおそらく、多くの観客は、退廃だ、唾棄すべきものだと口にしながら、じつはその美に酔っていたのではないかと推測します。 何もナチが政権を取ったからと言って、ドイツ人の多くが近代絵画を嫌ったわけではありますまい。 芸術と倫理をめぐる考え方は、様々なものがあり、ナチのように単純化することは出来ません。 美的判断と倫理的判断とが同じ芸術作品に適用されると、ややこしいことになります。 美的だけど倫理的じゃない、あるいはその逆、なんていうことは、芸術作品には非常に多く見られる現象です。 代表的な考え方に、自律主義と道徳主義と言われる立場があります。 自律主義は、作品に不道徳な面があったとしても、美的価値には一切影響しな...