2022-01-15

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文学

天魔と食う雑煮

正月に雑煮を食わなくなってどれくらい経つでしょう。 おそらく10年どころではありません。 同居人は雑煮が嫌いで、元旦の朝はもっぱら私が作っていました。 きちんと昆布と鰹から出汁を取り、鶏肉などを入れて醤油で味付けした、本格の雑煮です。 私はその出来に満足し、雑煮を旨く感じていました。 しかし同居人は、申し訳程度に餅を一つだけ食い、汁を啜ると早々に食事を終えるのでした。 これでは面白かろうはずもありません。 じつは私も、餅はそんなに好まないので、正月の雑煮を止めてしまいました。 毎年餅を喉に詰まらせて死ぬ愚か者がいます。 命がけで食うような代物ではあるまいと、自分に言い訳をして。 で、元旦から普通に白飯を食うようになりました。 そうなってみると、なぜあれほど力を入れて雑煮を作っていたのかと、自分が滑稽に感じられるようになりました。 雑煮食う 天魔のごとき 男らと 猫鮫先生(小説家、小林恭二の雅号)の俳句です。猿蓑倶楽部―激闘!ひとり句会小林 恭二朝日新聞社 様々な解釈が可能で、うら若い乙女が荒くれ男どもと雑煮を食う様子、と解く者もいれば、帰省した倅たちが雑煮をがっついて食っている、と解い...
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