2024-03-09

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文学

死の時間

昨夜は江藤淳による愛妻を看取った手記「妻と私」と自分史的な「幼年時代」それに福田和也、吉本隆明、石原慎太郎、3氏による江藤淳への追悼文が所収された文庫本を読みました。 200ページ足らずということですぐに読み終わりました。妻と私・幼年時代 (文春学藝ライブラリー)江藤 淳文藝春秋 江藤淳という高名な文芸評論家の名前くらいは知っていましたが、敬して遠ざけ、ついぞ読んだことがありませんでした。 文芸評論を読むくらいなら、文芸作品を読んだほうが良いと思っていたからです。 このたびその著作を読むことになったのは、書店で見つけてなんとなく、というのが実態です。 「妻と私」は末期がんに侵された妻を看病し、看取り、さらには妻亡き後著者自らが大病して闘病する様子を描いたものです。 その筆には鬼が宿ったがごとき迫力があって、読む者を圧倒します。 江藤夫妻には子供がおらず、二人だけで、夫婦と言うより同志愛のようなもので結ばれて生きてきたような印象を受けます。 妻を看病しながら、時間は日常的な時間と生死の時間という分類ができ、しかも生死の時間は死の時間にならざるを得ないと言うことに気付いたことが語られます。...
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