
常不軽
私はこの二十年、仏書に親しんでいますが、もっとも平易で、納得しやすく、しかも実行が難しいのが、法華経の「常不軽菩薩品」です。 これは、誰にたいしても尊敬の念を口にし、それがために迫害されたが、迫害する者にも尊敬の念をあらわし、ついには仏となり、法華経を説いた菩薩の話です。 私は、自ら組織の長の暴言を許せず、弁護士を立てて要求を突きつけた経験があります。このとき、私の頭の片隅にはこの法華経「常不軽菩薩品」がありましたが、私は自分を抑えることができませんでした。今でも、加害者に対しては抜きがたい嫌悪感があります。 しかるに、常不軽菩薩は、石を投げられても、常に、最後まで、「あなたを尊敬します」と言いつづけました。 逆を返せば、人間というものは、「売られた喧嘩は買ってやる」という意識があって、どんな状況でも相手を尊敬し続けるというのは、真に難しいということでしょう。 ガンジーは非暴力を貫きましたが、同時代、チャンドラ・ボースという、武力闘争を掲げる一派があって、大日本帝国はこれを支援しました。 また、現在のインドは核大国でもあります。 仏教が生まれてどれだけ経つのでしょうか。 今も世界は...