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文学

悪を描く

坂東三津五郎が59歳の若さで帰らぬ人となってしまいました。 たしか中村勘三郎もそのくらいの年齢で亡くなったと記憶しています。 当代の人気役者だけに残念ですねぇ。 私は一時期歌舞伎に凝り、わけても尾上菊五郎が贔屓でした。 顔よし、声よし、姿よし、と謳われていましたが、わりと小柄でしたね。 しかし江戸っ子の典型的なスタイルは小柄でやせ形ですから、それもまた売りだったのだろうと思います。 菊五郎の「弁天小僧」は私が最も好む演目で、お嬢様に化けて呉服屋に入り、イチャモンをつけて金をゆすり取ろうとしたところ、男とばれて、急に大きな伸びをし、着物を脱いで見得を切る場面は歌舞伎屈指の見せ場でしょう。 歌舞伎の本質は人間だれもが持つ悪を描くことにあろうかと思います。 善人だったやつがちょっとしたきっかけで悪に落ちたり、あるいは信頼しあった義兄弟を裏切ったり。悪への招待状―幕末・黙阿弥歌舞伎の愉しみ (集英社新書)小林 恭二集英社 それを流麗で耳心地の良い江戸弁でやるのだからたまりません。 坂東三津五郎は端正な芸風で知られ、私はもう少し崩れているほうがお好みですが、現代劇をも器用にこなす、役者以外の仕事...
仕事

若者

2月も最後の週を迎えました。 よく言われることですが、2月は3日短いだけなのに、やけに早く過ぎるように感じます。 そして今日は馬鹿陽気。 最高気温は17度にまで達するとか。 これからは時折こんな暖かい日が訪れて、少しづつそんな日が増えて本格的な春を迎えるのでしょう。 職場では、全員が人事部長になったかのように、4月の人事異動についてああでもないこうでもないと語り始めます。 滑稽なことです。 そういえば、土曜日に一杯やった女友達の後輩が、私の職場に就職するんだそうで、世間は狭いと感じました。 なんでも仕事を頑張りつつ、毎日定時で帰って運動するのだと張り切っているそうで、職場から徒歩圏内にアパートを借りるそうです。 若い人は夢があって良いですねぇ。 でも、17時ちかくから打ち合わせが始まったり、15時過ぎにメールで調書が届き、今夜中に回答しろとか、残業は不可抗力ということがけっこうあります。 私はそういうやむを得ざる場合以外は定時で帰っていますが、私の部署では、私以外全員、部署の長が帰るまでなんとなく待っています。 そういう雰囲気になってしまいました。 ひと昔前までは普通のことでしたが、今...
その他

寂寥

昨夜は女友達2人と人形町で懐石料理に舌鼓をうち、さらには近くのバーへと繰り出しました。  話題が尽きることはなく、様々に語り合いました。 それは楽しいに違いありませんが、一抹の寂しさを感じざるを得ませんでした。 私たちが共同で挑んだ激務からは遠くはなれ、今、別々の機関で働いているという事実が、いかに仲良く過ごした時間を共有したとはいえ、時の流れとともに人は別れていくのだという、絶対的孤独のようなものを感じさせたものと思います。 もちろん、私たちは今も友人ですし、時折会って話をすることもできますが、それは過去の亡霊に拠るしかないわけです。 親しい人と会うということには、必ずそういった寂しさが付きまとうのだろうと思います。 それは友人であれ、親族であれ。 毎日顔を合わせている家族とはあまりそういった感覚を持ちませんが、しかし考えてみれば、家族との毎日の付き合いに中にこそ、もっとも大きく、激烈な寂寥感が漂うのかもしれません。 2人とは、再会を約して帰りました。 また会えることは間違いないでしょう。 楽しい時間を過ごした後、一夜あけてこんな風に時の流れの無常を嘆かなければならないとは、私も業欲...
文学

遊園地

色川武大の短編に、「少女たち」という佳品があります。 「離婚」という短編集で読むことができます。離婚色川 武大文藝春秋 この小説では、訳ありの少女たちと共同生活を送る男が描かれますが、共同生活は終りを告げることになります。 それを惜しむ少女たちに、男は一言、「もう遊園地は終り」と宣言します。 少女たちとの幻想的とも言える現実離れした生活とその終りを描いて、少女たちの成長の物語とも、男の孤独を表す物語とも読める、切なくも美しい作品でした。 今夜、私は日本橋人形町の懐石の店で、15年来の付き合いになる女友達2人と一杯やる予定になっています。 一応、遅い新年会ということで。 今思えば、15年前、私が激務を強いられる職場で耐えられたのは、この2人を始めとして、多くの気の合う同僚に恵まれたからだろうと思っています。 激務の合間に飲みに行ったりカラオケに行ったり。 私は行きませんでしたが、スキーなんかにもグループで行っていたようです。 地獄の中の小さな遊園地のようでした。 1人は都内に1LDKのマンションを購入して一人暮らし。 もう1人は長いこと内縁関係にある男と暮らし、未だに籍を入れようとしませ...
仕事

ご隠居サラリーマン

就職してもうすぐ丸23年になりますが、どうしても職場や仕事に慣れることができません。 もちろん、それなりに経験を積んで知識や悪知恵もつき、立ち居振る舞いもそれっぽくなったとは思います。 しかし今も、毎朝出勤したくないと思いますし、休みの日が待ち遠しくて仕方ありません。 多分、退職するその日まで、この葛藤は続くのでしょうね。 思い起こしてみれば、幼稚園へも、小学校へも、中学や高校へも、行きたくない病と闘いながら登校していたように思います。 唯一大学だけは、気ままに気楽に通っていました。 それはひとえに、自分が取りたい講義だけを取って、しかもそれは興味があったり得意だったりしたし、自由な時間がたくさんあったからだろうと思います。 いずれにしろ、3歳で幼稚園に入園してから、もう42年もウィーク・デイにはどこかに通うという生活を続けているのですねぇ。 我ながらご苦労様なことです。 昨年4月に比較的仕事量が少ない部署に異動になって喜んでいたら、部署の長に変な奴が来て、部署の雰囲気は悪いですが、そんなことは気にしなければ良いだけです。 特に4月に私が長にご注意申し上げてから遠ざけられ、ほとんど干さ...
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