今日は気温は低いながら関東名物のからっ風もなく、陽射しのぬくもりを感じられる良い日和でした。
陽射しの強さは、もう春のそれです。
で、散歩に出かけました。
私のお気に入りの散歩コースの一つ、渋谷から青山まで歩き、東京メトロ半蔵門線の青山一丁目駅から帰るルートを選びました。
通常ですと、センター街やハチ公口の人混みを嫌い、人が少ない東口からすぐに青山通りの裏道、洒落た服屋や飲食店、雑貨店が点在する道を歩くのですが、思い立って、ハチ公口に出ました。
ここのスクランブル交差点はおそらく世界一人が多い交差点かと思われます。
日本人である私は知りませんでしたが、スクランブル交差点というのはもともと日本にしかなく、この交差点の雑踏を眺めるために、交差点に面したビルの2階にある喫茶店は、いつも外国人観光客でいっぱいだそうです。
築地市場といい、渋谷のスクランブル交差点といい、外国人は思いもかけない物に目を付けるものですね。
私が通っていた大学の最寄り駅は渋谷駅と表参道駅。
人混みが苦手な私は普段表参道駅を使っていましたが、BUNKA村に美術展や芝居を観に行く時や、映画を観たりするとき、それに友人と一杯やりに行くときなどはやむを得ず渋谷に出ていました。
そんな風に渋谷は縁ある町ですが、109に入ったことは一度もありません。
一遍くらい冷やかしてみるかと、初めて109に足を踏み入れました。
さほど広くないビルですが、様ざまな女性用の服や下着、小物を売る店がひしめき、中高生くらいの少女たちが躁状態にでもなったかのごとく、買い物を楽しんでいました。
子ども相手の商いであるだけに、おそろしく安いのですね。
島村より安いんじゃないかと思いました。
閉口したのは、各店舗がそれぞれ大音量で音楽を流していること。
騒々しくてかないません。
店員は一日あんなところにいて耳がおかしくならないんでしょうかねぇ。
面白いと思ったのは店員のファッション。
お笑い芸人の舞台衣装にしか見えないような派手な服装やお姫様のような服装をし、一様にまぶたが重くて疲れちゃうんじゃないかと思えるほど付けまつげを激しく盛り、クレオパトラのようなアイラインを引いていました。
店員の奇抜なファッションも舞台装置の一つなんでしょうね。
騒々しさに耐え切れず、15分ほどでいつものとおり東口に移り、青山通りの裏道をふらふら。
こちらに点在する店は、109とは対照的に静かで、目の玉が飛び出るような高額な品を取り揃えていました。
青山墓地に差し掛かると、梅が咲いていました。
もう春なんですねぇ。
白梅を観ると、いつも、
しら梅に 明くる夜ばかりと なりにけり
という、敬愛する俳人、与謝蕪村の辞世を思い出します。
109の騒々しさを脱出した私は、思いがけず、青山墓地で静かに白梅を鑑賞する僥倖を得たのです。
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