文学 菊投げ入れよ
あるほどの 菊なげ入れよ 棺の中 夏目漱石が同時代の夭逝の歌人、大塚楠緒子の死にあたって詠んだ句です。 この人、詩歌を詠んだり、小説を書いたり、翻訳をしたり、明治時代にマルチな才能を発揮した女性です。 同時代を生きた夏目漱石にしてみれば、手足をもがれるような思いをしたことでしょう。 菊で思い切り棺を飾りたいという思い、切ないですねぇ。 今を生きている人間にとって、死は未知であり、また逆に逝ってしまった人にとって死は当然の事態でありましょう。 私たち生きている者は死がいかなるものであるか知りたくてたまらず、しかし死者は沈黙を守る他ありません。 私たちは最も知りたいことを知ることができず、死者は教えたいことが教えられません。 この生者と死者のミスマッチ、埋められることは無いのでしょうね。 私たち生きている者は、日々の雑事に追われながら、時折、根源的な死の恐怖に襲われることを如何ともなしえません。 この不思議を腹に抱えながら、あらゆる人々が平気な顔をして日々を生きていることが、不思議でなりません。 そういう私も、日々、雑事を平気な顔でこなしているのですが。 しかしそういう生き方以外に、いか...