文学 そのこと
昨夜、ウィスキーのロックをちびちびやりながら、かつて傾倒した三島由紀夫の「鏡子の家」をぱらぱらと眺めました。 昭和30年代の東京を舞台にした青春群像劇で、夫と別居して信濃町で娘と暮らす鏡子の家に入り浸る4人の若者の成功と挫折を描いた作品です。 すでに「金閣寺」などで名声をおさめていた三島由紀夫が、いわゆるメリー・ゴーラウンド方式と言われる、複数の主人公が互いにあまり関わることなく物語が進んでいくという手法を採った意欲作ですが、当時の文芸評論家からは酷評されたようです。 読み手が三島由紀夫に追いついていなかったものと思われます。 メリー・ゴーラウンド方式と呼ばれる手法は映画でも使われ、名作「愛と哀しみのボレロ」などが製作され、私はこの手法の物語をわりと好んでいます。 野心あふれる若いサラリーマン、プロを夢見るアマチュアボクサー、売れない画家、売れない俳優の4人の青年が同格の主人公であり、戦後の高度成長を冷ややかに見ながら4人の希望あふれる若者に自宅をサロンとして提供する鏡子が狂言回しのような役割を担っています。 彼らはそれぞれに成功し、鏡子の家から離れていき、結局挫折するのです。 最後に...