美術

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上村松園の美人画

現在、東京国立近代美術館で、上村松園展が開催中です。 これを是非見に行きたいと思っていましたが、人気の高い画家だけに土日に行ったら人の頭を見に行くようなものだと危惧し、今日休暇をとって、朝一番に出かけました。 しかし、作戦は失敗。 年配のご婦人を中心に、券売所は二重三重の列がとぐろをまいていました。 なんとか入館しましたが、まさに見えるのは白髪頭や禿げ頭ばかり。 平日でこんなに混んでいる美術展は初めてです。 それでもじりじりと前に行き、いくつかの見たかった絵は見ることができました。 その他の絵は、残念ながら素通りせざるをえませんでした。 上村松園の絵はほとんどが美人画ですが、男が描くとどこか艶っぽく、性的な香りがするのに対して、女性が描くと、清らかな美しさが強調されます。 若い美人、母と子、恋に狂った女、舞い踊る女、蚊帳をつる女、どれもどこか清らかです。 女性に人気が高いのも故なしとしません。  その後、行く予定ではなかったのですが、消化不良気味だったので、工芸館にも立ち寄りました。 茶事をめぐって展です。 こちらは近世から現代の茶道具などが並んでいて、渋い展覧会でした。 本館とは正反...
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退廃

土曜日に芸大美術館に行き、シャガールの絵に感銘を受けたことは、すでにブログに書きました。 今では何の違和感もない写実から遠く離れたシャガール等の絵画ですが、一時期、ドイツで退廃芸術として迫害されていたことがあります。 ナチは優れた北方民族の芸術は、健康的で分かりやすくあらねばならないと考え、抽象的な芸術を病的退廃として退けたのです。  皮肉なのは退廃芸術論を最初に唱えたのが、ユダヤ人の医者だったことです。 ブダペスト生まれの内科医、マックス・ノルダウは、近代芸術が規格を外れていったのは、急速な近代化による環境の変化のため、多くの芸術家が脳、もしくは眼、あるいは精神の病気に罹ったためだと説きました。そのために精神病患者に絵を描かせ、近代絵画との類似を指摘する念の入れようです。 この説は19世紀末、日本を含む多くの国々でかなり受け入れられたようです。 印象派からダダイズム、シュールレアリスムに至る一連の近代芸術が、多くの伝統的芸術愛好家から蛇蝎のように嫌われていたのでしょうね。  ナチはこの説を援用し、いわゆる近代芸術家は、スラブ人やモンゴロイド等の劣等人種か、そうでなければ精神病だと断じ...
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シャガール

昨日は東京芸術大学美術館に足を運びました。 「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展です。 シャガールは色彩の魔術師と呼ばれる天才画家ですが、その色彩感覚の鋭敏さは、驚嘆すべきものです。他のロシア・アヴァンギャルドの画家の作品も数多く展示されていましたが、遠目から見ても、シャガールの作品はそこだけスポットライトが当たったかのように、輝いて見えます。 この時期の絵は、ピカソにしてもダリにしても、どこか不思議な構図を持っています。シャガールもご多分にもれません。 しかしなぜか、シャガールの作品は明るく、楽天的な印象を与えます。 こればっかりは持って生まれた資質としか言いようがないものです。 このところ日本美術の展覧会にばかり足を運んでいましたので、久しぶりに見る現代西洋アートは、私に鮮烈な印象を与えました。 じつをいうと、30歳を過ぎるまで、私は日本美術よりも現代西洋アートを好んでいたのです。シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ) (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガータッシェンシャガール―色彩の詩人 (「知の再発見」...
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江戸絵画

広尾の山種美術館へ行ってきました。  この美術館は近現代の日本画を専門としていますが、江戸絵画も多く所蔵しているとのことで、今回は「江戸絵画への視線」と銘打った展覧会です。 江戸絵画といっても浮世絵はなく、狩野派や琳派、文人画などが所せましと並んでいました。 わけても酒井抱一の絵は上品なうえに私を引き込む力があり、気に入りました。 もし一点もらえるとしたら、「月梅図」でしょう。左から:酒井抱一「飛雪白鷺図」「菊小禽図」「秋草図」「月梅図」 暑いなかけっこうな人出で、江戸絵画の人気の高さがうかがえました。もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)玉蟲 敏子東京美術酒井抱一 (新潮日本美術文庫)玉蟲 敏子新潮社↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
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日本美術のヴィーナス

日比谷の出光美術館に出かけました。 日比谷公園の地下駐車場に車を停めましたが、ガラガラでした。お盆なんですねぇ。  展覧会は、「日本美術のヴィーナス」です。 江戸から終戦直後までの、浮世絵を始めとする美人画を一堂に並べたものです。 最初の絵が普賢菩薩だったのには驚きました。 中性的に表現されてはいるものの、男じゃないですか。 しかしその後は、遊女やら少女やらの美人画ばかりで、飽きさせません。  私がとくに気に入ったのが、葛飾北斎の月下歩行美人図です。 図録の写真を撮ったのですが、フラッシュで焼けてしまいました。  はかなげな美人が物思わしげに月の下をゆるゆると歩く姿は、なんとも幻想的で、私はしばし、この絵の前に立ち尽くしました。 この図録を枕の下に入れたら、満月の晩、現れて、私と夜の散歩を共にしてくれないでしょうか。 あるいは夢に現れて、月夜の逢瀬を演じてはくれないでしょうか。 画狂老人の筆の冴えは、はるか時を越え、私に恋心を抱かせたのです。
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