文学 本朝聊斎志異 夏といえば怪談。 そこで、私が最も尊敬する現代作家、小林恭二の「本朝聊斎志異」を読みました。 「聊斎志異」といえば、清代の著名な怪異譚ですが、小林恭二はこれを底本に、見事に本朝にうつしとっています。悲劇・喜劇・怪異のオンパレードです。 物語を読む楽しみは、元来、このような、この世ならぬお話に尽きると言えます。 充分に堪能しました。本朝 聊斎志異小林 恭二集英社 2008.08.12 文学
文学 白浪五人男 7月25日(金)の深夜にNHKで放送された「劇場への招待・『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうし はなの にしきえ)」を録画したビデオを観ました。 通称「白浪五人男」で知られている歌舞伎です。 歌舞伎特有のご都合主義も気にならない、娯楽作でした。 尾上菊五郎演じる弁天小僧の江戸弁にうっとりとし、悪を描く徹底ぶりに圧倒されました。 作者の河竹黙阿弥については、小林恭二の評論「悪への招待状」がお勧めです。 2008.07.28 文学
文学 伊勢物語 ぼんやりした頭で、「伊勢物語」を二十年ぶりに再読しました。 二十年前は、西洋文学に興味があったので、「伊勢物語」を読んでも、物語の体をなしていないように感じましたが、今読むと、日本独特の、想像力を誘う物語形式であると感じました。 いわゆる「色好み」の「歌物語」ですが、現在、このような形式で物語を作ることは極めて困難でしょう。 歌が物語の中心ですから、極端に言えば、和歌集にちょっと長い物語風の注釈をつけただけのようにも見えます。 しかし、有名な伊勢斎宮との密通など、ショッキングな内容も含んでおり、そうした読み方は間違いでしょう。 やはり、「伊勢物語」は独特の形式を確立したものと言わざるを得ません。 2008.07.27 文学
文学 モンキー・ビジネス 今年の春に創刊された季刊文芸誌「モンキー・ビジネス」2号を購入しました。 「眠り号」とのことで、睡眠に関する小説や詩を掲載しています。異色なのは、中島敦など、昔の作品も掲載していることです。 私は、昔、夢日記を付けていたことがあります。しばらく付けていると、夢の記憶があまりに鮮明になって、現実と夢を混同するようになり、半年ほどで止めました。筒井康隆も夢日記を長年付けているとか。大丈夫なんでしょうか。 2008.07.23 文学
文学 源氏物語「大沢本」 源氏物語「大沢本」の発見がニュースになっています。 千年紀に合わせて発表した感があります。 学生時代、「源氏物語」青表紙本を、昭和天皇の作歌指南役で、現代を代表する歌人、岡野弘彦先生から教わりました。 そのとき、岡野先生が「源氏の研究は始まったばかり」、と仰って、何を馬鹿な、と思いましたが、今回の発見で、そうなのかも、と思いました。 岡野先生は、現代版「伊勢物語」を書きたいという理由で、私が四年生のときに退職されました。今でも時折テレビなどでお見かけします。 「サラダ記念日」が売れたとき、俵万智と岡野先生を比較する論文が発表されて、激怒されたのを懐かしく思い出します。 2008.07.22 文学