文学

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ギンイロノウタ

またもや村田沙耶香の小説を読んでしまいました。 「ギンイロノウタ」と「ひかりのあしおと」の2編の中編が収められた本です。 村田沙耶香初期の作品ということで、それほど狂気じみてはおらず、いかにもな文芸作品に仕上がっています。 それでもどこか不気味です。 怖い文芸作品はホラー小説とは似て非なるものです。 私の分類では、文芸作品は一度読んだだけで中身を忘れない、ホラーはすぐ忘れてしまうということです。
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何者

昨夜は「イン・ザ・メガチャージ」で本屋大賞を取った朝井リョウの直木賞受賞作「何者」を読了しました。 5人の就活生の群像劇になっています。 学生らしいあれこれが語られ、いわゆる青春小説かと思わせますが、ラストに至って、そんな生易しいものでは無いと気づきます。 ツイッター(当時)に裏アカを持つ主人公。 彼は観察者として、仲間たちの行動を観て、裏アカでそれらを批評するのです。 お前は一体何者なんだ?、と。 それが友人の一人にばれてしまいます。 責められる主人公。 お前は一体何者なんだという問いは、当然、自分に返ってきます。 スリリングな展開でした。 私は就職して35年目を迎えていますが、何者にも成っていないし、何事もなしていないと感じています。 ただ目の前の仕事をこなし続けただけです。 就活生が自分は何者かなんて分るはずがありません。 しかし彼らは、自分がいっぱしの何者かであると信じて就活に臨み、何者であるかを問うています。 私は56歳で何者でも無い、鵺(ぬえ)のような存在になり果ててしまいました。
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タダイマトビラ

昨夜は村田沙耶香の「タダイマトビラ」を一気読みしました。 私はこの作者の作品が得意ではありません。 作家仲間からクレイジー沙耶香と呼ばれるほどの狂気じみた作品ばかりだからです。 独特の世界観で、現代社会のシステムを切って捨てます この作品では、自分の家族を失敗作と感じている少女が、理想の結婚をして成功した家族を作ることを夢見る場面から始まります。 幼い恋を経験し、高校生になると大学生と付き合うようになり、彼からプロポーズされます。 ここまでは普通の意匠を纏っています。 しかしここで少女は彼に嫌悪を感じ、腹を思いっきり蹴とばして逃げ出してしまいます。 少女は結婚や家族という概念はあるべきではなく、それよりも前の、システムが誕生する前の世界に帰らなければならない、と強く感じます。 そしてバラバラだった家族が仲良くなって家族ごっこを始めるに至り、彼女の何かが弾けます。 このシーン、怖気を感じるほど不気味な迫力に満ちています。 苦手だと思いながら、書店で見かけるとつい、手にとってしまいます。 通販で買うことはありません。 空恐ろしい小説家です。
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ブルーボーイ事件

日本で最初の性適合手術(当時は性転換事件)を行った産婦人科医が優生保護法違反の罪で逮捕、起訴された事件を基にした映画「ブルーボーイ事件」をネットフリックスで鑑賞しました。 今でこそLGBTQ(女性同性愛者・男性同性愛者・両性愛者・性自認が実際の肉体と異なる者・性自認が曖昧な者)の権利が声高に叫ばれ、表向きは性的少数者を差別してはならない社会になりましたが、この映画で描かれた半世紀以上前の日本社会では、差別は当然のことでした。 私は高校生の頃から男性同性愛に強い興味を持ち、多くのゲイの映画や小説に接し、美しい世界だと感じてきました。 しかし悲しいことに、私自身の性的嗜好はあまりにもストレートです。 すなわち、20代半ばから40歳くらいの優し気な女性を好む、という。 両性愛者ですらありません。 そして同性愛の世界に深いシンパシーを覚える私にも、多分差別意識はあるのだと思います。 フィクションで描かれる同性愛は美しくても、現実のそれはそうとも言い切れないからです。 したがって私は生身のLGBTQに出会ったなら、嫌悪を覚えるかもしれません。 私の職場に、性適合手術を受けて戸籍も男から女になった...
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人間標本

左目の手術をしてから、これまで読書は控えてきました。 目が疲れるからです。 しかし職場ではパソコン仕事をしているわけで、読書も問題なかろうと思い、まずは気楽なエンターテイメントからがよろしかろうと、御大、湊かなえの「人間標本」を一気読みしました。 タイトルがなんだか江戸川乱歩風ですね。 蝶々の研究者である大学教授が、美少年たちを殺害し、標本にする話で、どこかで聞いたような気がしますが、それを見事に読ませる力は大したものです。 しかし私は、何だか平凡な気がしました。 イヤミスの女王としてはもう少しだったように思います。
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かくしごと

最近お気に入りのモデルであり女優でもある出口夏希が主演する1年前の映画『か「」く「」し「」ご「」と「』を早朝からDVDで鑑賞しました。 出口夏希は他の作品でも女子高生役ばかりですが、じつは24歳だそうです、 24歳で女子高生役はやや難ありですが、おじさんから観るとあまり違和感を感じません。 単に若い、というだけで括られてしまうようです。 高校生男女数名の群像劇になっています。 そしてそれぞれに、人には言えない特殊な能力を持っています。 他人の感情が記号化されて見えてしまう者、誰が誰を想っているいるかが見えてしまう者など、様々です。 ひねりが効いていることは確かです。 ただし、ひねりが上手く回っているかは別問題で、物語というものは難しい。 青春SF物と言うんでしょうか、私のようなおっさんが喜ぶ映画では無いかもしれません。 うまく感情移入できませんでしたし。 今日の飯。 朝はハム2枚、卵2個を使ったハムエッグと全粒粉パンのトーストが1枚。 昼はイカ墨スパゲティとほうれん草のソテーと熱い珈琲2杯。 晩はそごう千葉店で購入した1,500円の和食弁当。  今日は千葉の駅ビルに在る大型書店に本を買...
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追悼 岡野弘彦先生

眼科医の許可が出て退院したものの、なかなか左目のゴロゴロとした違和感と赤さが取れません。 鏡で見る私の左目は異様に赤く、知らない人が見たらさぞかし気色悪く思うでしょう。 次の診察は5月8日の金曜日。 それまでに赤さや違和感が取れていると良いのですが。 今朝の朝食はあまり旨くありませんが血糖の上昇を抑えるという全粒粉パンを2枚。 昼はホタテの小エビとブロッコリーがたっぷり載ったジェノベーゼとサラダをいただき、食後に珈琲を2杯飲みました。 晩は葱と鶏肉の炒めと生キャベツ、トマトを食す予定。 これから出来るだけ何を食したかを記録していきたいと思います。 糖尿の気もあるので。 緑内障、高コレステロール、高血圧、気管支喘息、糖尿、双極症。 眼科と内科と精神科に定期的に通っています。 その他半年に一度の歯のクリーニング。 年を取ると病院通いを自慢するようになると言いますが、本当にそうですね。 人の体も経年劣化は避けられず、どんなにメンテナンスをしても、必ず、全員、死に至ります。 私の肉体も緩やかに衰えているのを感じます。 もっと年を取ると、衰えは加速度的に早くなるのでしょう。 先般、私の大学時代の...
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入院初日

緑内障手術のために千葉大学病院に入院しました。 今日は検温と血圧検査、明日の執刀医2人による診察とシャワーを浴びたのみで暇。 病室は大部屋ですが箪笥や椅子、冷蔵庫にテレビがあって、カーテンで完全に仕切られており、うるさい患者もおらず、まぁまぁ快適です。 個室ほどではないでしょうけれど。 以前気管支喘息の発作で入院した市立病院に比べると、飯もそこそこ食えます。 市立病院での飯の不味さが強烈な印象を残していたので、有難いことです。 暇なので、持ってきていた「筒井康隆自伝」を読みました。 事実の羅列のみで、つまらないと言えばつまらないですが、ファンには興味深く読めるでしょう。 明日の手術は10時半から。 1時間以上かかるとのこと。 手術室は寒いという話をよく聞きます。 全身麻酔ならいくら寒くてもいいんでしょうけれど、私の場合眼だけの局所麻酔。 寒いのは嫌です。 それと、眼のすぐ下に針を刺すという麻酔が恐ろしくて仕方ありません。 今夜は眠れないかもしれませんね。
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クレイジーさやか

作家仲間からクレイジーさやかと称されている村田沙耶香の短編集を読みました。 「信仰」という小説集です。 クレイジーさやかとはよく言ったもので、この人の世界観は独特で、時に気色悪かったりします。 嫌悪を感じることも多いですが、なぜか手に取ってしまいます。 劇薬のような小説群です。 これが結構売れているということは、世の中狂っている、もしくは狂いたい人が多いのかもしれません。 私もその一人です。
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イン・ザ・メガチャーチ

本屋大賞受賞作「イン・ザ・メガチャーチ」を読み終わりました。 本屋大賞とは、書店員が読んでもらいたいと思う小説に投票し、最も得票が多かった作品が受賞するというものです。 偉い先生が選ぶ直木賞よりも本屋大賞を受賞するほうが嬉しいという作家もいるほどです。 それはそうでしょう。 現場の人が面白いと思ってくれているわけですから。 この小説はファンダム経済を扱っています。 いわゆるオタクが推しのために多額の金を遣って同じCDを何十枚も買ったり、オタク仲間と金を出し合って渋谷に巨大な広告を出したり、それで経済が潤うというカラクリ。 当然、アイドルや俳優を操っているのはバックにいるおじさん達ですが、オタクはそんなことは百も承知で推し活を嬉々として進めます。 この作品では、若手俳優が突然自殺し、そのファンたちが自殺を認めず、霊媒師に多額の金を払って若手俳優と対話し、自殺ではなく、日本崩壊を企む黒幕に依って殺されたのだと確信するに至ります。 若手俳優が黒幕の存在に気付いてしまったから殺されたというのです。 そしてまるで新興宗教のように黒幕の存在を暴くための運動に血道を上げることになります。 そのストー...
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ジャガーワールド

我が偏愛する作家、恒川光太郎先生の長編ファンタジー「ジャガーワールド」を読了しました。 単行本で630頁の大作です。 この小説家は短編や中編を得意とし、長編は多くありませんが、短編や中編にはない壮大で神話的な物語が語られます。 マヤ文明に取材した作品のようですが、それはあまり気にしなくて良いでしょう。 生贄を捧げないと神々が機嫌を損ね、飢饉や旱魃が起こると信じられていた古代文明。 そこに反生贄の思想を掲げた反社会的と目される教団が誕生。 勢いを増していきます。 そしてはるか昔に滅びたとされる部族が密かに生き残ってどこからともなく現れ、人をさらったりして去っていきます。 また、この部族は優れた賢者の国とも目されて、独特の文字を持ち、生贄を支持しています。 王国に不満を抱く者達が教団と結託し、さらには生贄に供されてきた島の人々をも巻き込み、壮大な戦いが描かれます。 恒川光太郎先生は一部マニアに愛される作家から、一気に広く一般に読者を広げることでしょう。 考えてみると、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロも「忘れられた巨人」というファンタジーを書いていますし、村上春樹にいたってはファンタジーだら...
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誰もいない夜に咲く

昨日はお気に入りの作家、桜木紫乃の短編集「誰もいない夜に咲く」を読みました。 そういうタイトルの作品があるわけではありません。 全体を通したタイトルです。 最初の作品が印象に残りました。 「海に咲く」です。 中国から半ば買うようにして嫁を迎えた酪農家の長男。 この男、30歳にして童貞です。 中国人花嫁が人生最初の相手となります。 中国の農村から買われてきたというにしては、二人の仲は順調です。 ラスト、花嫁が「我愛爾」と呟き、夫がそれに合わせて「うお・あい・にい」と返すシーンは美しくもあります。 意味は「I Love You」ということ。 その他にも印象的な文章がありました。 生きていれば、すべて過去にできる。 死んでしまったら、望むと望まざると関係なく過去にされてしまう。 貧乏性とは呼ばず、幸福のハードルが低いだけ 豊かな読書体験ができたと思います。
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星々たち

桜木紫乃の小説を読みました。 「星々たち」です。 星とは人のこと。 中島みゆきにも「地上の星」という曲がありましたね。 物語は千春という、何を考えているのか分からない、愚鈍なところがある女が子供から大人になり、老いていくさまを、連作短編集の手法で描いています。 連作短編集であるため、必ずしも千春が主人公ではなく、チョイ役の作品もあります。 ただし必ず登場するのです。 千春は父にも母にも捨てられ、祖父母に育てられます。 無口でお世辞にも魅力的な人物とは言えません。 しかし小学校高学年くらいから、細見の体には不釣り合いなほどの胸のふくらみを得ることになります。 当然、体目当ての男が現れます。 この作品にも、桜木作品によく見られる印象的なフレーズが多用されます。 いつの間にか、体は義務でしか、心は体裁でしか動かなくなっていた。 表面的に優しくしながら、生かさず殺さず長い時間をかけて相手をへこませ続けるんだよ。 赤ん坊が乳を飲む様を、これは命の、尊い貪欲さだ、と描いて見せます。 私はそれらの文章に感銘を受けるとともに、嬉しい気分になります。 これら短編集も、他の桜木作品同様、北海道が舞台になっ...
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氷平線

今日は午後3時から緑内障手術のための手術前検査があります。 千葉大学医学部附属病院の眼科に行かなければなりません。 午後のみの半日休暇でも良かったのですが、面倒くさいので一日休みを取りました。 午前中は読書をして過ごしました。 読んだのは、桜木紫乃のデビュー作を所収した短編集、「氷平線」です。  いずれも北海道の道東を舞台にした短編群です。 寒々しく、因習的で、あからさまな田舎の人間模様が描かれます。 酪農の家族や漁村、理髪店などを扱って、鮮やかに人生の断面を切り取って見せます。 道東というのがそういう場所なのか、田舎と言うのはそもそもそういうものなのか分かりませんが、やたらと簡単に不倫したり男女がくっついたり離れたりします。 やや違和感を覚えます。 あっさりした性交描写がどの作品にも描かれています。 印象的な文章が紛れ込んでいて、それを見つけ出すと嬉しくなります。 与えられて足りたという記憶がなければ、欲の落ち着き先など見つけようもないだろう。 や、 実際に殺すことと、生きている人間をいないものとして生きてゆくことに、どんな違いがあるだろう。 と言った言葉。 深く胸に刺さります。 こ...
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生命式

久しぶりに小説を読みました。 村田沙耶香の短編集「生命式」です。 この人の小説を読むのは、「コンビニ人間」、「消滅世界」、「地球星人」に続いて4冊目です。 独特の世界観を持つ作家ですが、好悪が分かれるでしょうね。 谷崎潤一郎の「異端者の悲しみ」、芥川龍之介の「或る阿呆の一生」、太宰治の「人間失格」などは、自分を世間の常識から外れた少数者と認めることから始まっています。 しかしこの作家は、前述のような小説もありますが、そうでは無いものの方が多いように感じます。  多くは正常あるいは多数者こそが異常であり、自分は誰にも理解されないながら、唯一無二の正しい存在と自覚し、世の中と対峙していくというスタンスの作品が多いように思われます。 それが少々鼻に着きます。 内容が極端で、SFに近い味わいもあります。 私は正直に言ってあまり好きではありません。 しかし、時折読みたくなります。 毒気に当たりたくなることもあるものです。 久しぶりの村田節、気持ち悪いけど、癖になる味ではあります。
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