思想・学問

スポンサーリンク
思想・学問

超能力

研究機関に勤務していると、時折、一風変わった研究について教えを請いに来る人がいます。 先日は、もう50歳は過ぎているかと思われるおじさんが、研究生として受け入れて欲しい、とコンタクトを取ってきました。 おじさんの独自の研究によると、有史以前、現在の天皇家の祖となった一族が世界を支配しており、それらは古文書からも考古資料からも明らかだ、というのです。 で、私が勤務する機関の文献史学者と考古学者はおじさんを押し付け合い、結局断りました。 でもその話、偽書とされる竹内文書などとそっくりな気がします。 受け売りですかねぇ。 それを横で見ていて、福来友吉博士のことを思い出しました。 明治末期、催眠術の研究によって東京帝国大学で博士号を取得した人で、東京帝国大学という日本最高のアカデミズムの現場で助教授を勤めながら、興味の対象が心理学から超能力に移り、千里眼やら念写やらの研究を始め、超能力者を集めて公開実験をやったりして、明治から大正にかけてマスコミをにぎわせた人です。 しかし、検証実験ではことごとく失敗し、実証性がないと、事実上東京帝国大学を辞職に追い込まれ、その後は私設の研究所でひっそりと研究...
思想・学問

一周忌

今日は実家のお寺で亡父の一周忌法要が営まれました。 密葬および本葬のときとは違い、親族だけでひっそりと行われ、法要後の会食もくだけた雰囲気が漂いました。 遺骨は亡父の希望で歴代住職の墓ではなく、祖先が眠る小さな墓へと納められました。 これでいよいよ父も安眠できるものと思われます。 生命力の塊のような、力強く、教養豊かで、欲深だった亡父も、72歳ではかなくなってしまうとは、人生というものはわかりません。 過去、人々は死について様ざまな思考をめぐらせてきました。 わが国の神話では死後は黄泉の国に行くとされ、それは穢れでもありました。 ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の三宗教では、やがて最後の審判の日が訪れ、すべての死者がいったん蘇って天国行きか地獄行きかの審判を受けるとされています。 仏教では悟りを開けば輪廻転生を免れ、極楽往生できると説きました。 それは後に発展し、日本仏教などの大乗仏教では、すべての衆生が救われると説くようになりました。 とくに浄土真宗では、有名な「歎異抄」に見られる、善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや、と言って悪人正機説にまで高められました。 悪人というのは犯罪...
思想・学問

600年ぶり

第265代ローマ教皇、ベネディクト16世が退位を表明しましたね。 ローマ教皇の退位は600年ぶりだとか。 この600年、ローマ教皇に就任すると亡くなるまでその職務を担っていたというわけで、おじいちゃんにはしんどかろうと思います。 報道では、ローマ法王という呼称が一般的ですが、ローマ教皇庁は一貫して教皇と呼ぶようマスコミに働きかけており、正式名称はローマ教皇です。 王より皇のほうが偉いからでしょう。 キングではなく、エンペラーだというわけで、現在世界でエンペラーと称されるのはローマ教皇とわが国の天皇陛下の2人だけです。 キングはたくさんいますが。 ベネディクト16世という人、教義に厳格で同性愛や中絶、安楽死、はては避妊まで否定する石頭でしたね。 前のヨハネ・パウロが世界中を飛び回り、温厚な人柄が愛されたのとは対照的でした。 在任中にカトリック聖職者による少年らへの性的暴行が問題になった時、「性的暴行はカトリックに限った問題ではない」と発言して物議をかもしたり、イスラム教を攻撃したり、さらに仏教を称して「信仰の義務さえない自己陶酔」と批判したりして、教養の無さと他宗教に対する寛容さが無いこ...
思想・学問

皇紀2671年

今日は建国記念の日でお休み。 明治初期にわが国の建国を祝う日とされ、紀元節という名の祝日となりました。 もともとの根拠は、日本書紀に見られます。 初代の神武天皇が橿原宮で紀元前660年の元旦に即位し給うた日ということで、それを太陽暦に換算すると2月11日ということになるそうです。 戦前は元号とともに皇紀が広く用いられ、今年は紀元2671年ということになります。 敗戦後、長く紀元節も皇紀も根拠が脆弱であり、しかも軍国主義の遺物であるとして忌み嫌われてきましたが、国民の間から紀元節の復活を願う声が澎湃として起こり、昭和46年、建国記念の日と名称を変えて復活しました。 暦というのは西洋暦にしてもイスラム暦にしても根拠が明確ではありません。 したがって皇紀の根拠が脆弱であることをもってこれを否定することはあまり意味がありません。 暦は歴史的正統性よりも、国民に広く根付いているかどうかのほうが重要で、それは暦が日々の暮らしに欠かせないことから当然です。 まして軍国主義とは無関係です。 世界でも稀なくらいわが国で広く民主主義思想が流行し、軍人が軍服を着て表を歩くことを憚ったと言う大正デモクラシーの...
思想・学問

Hybrid Culture

わが国の文化は、伝統的にHybrid Cultureだと言われることが多いですね。 適切な日本語が思い当たりませんが、混合文化とか混成文化と言うことでしょうか。 古くは仏教の受容。 これによって、神道を中心としたアニミズムの文化は一歩後退しましたが、神仏習合に見られるように、廃れることはなく、新しい文化である仏教と融合しながら、古い文化も生き残ってきました。 また、儒教を受け入れる際、本場、中国では孝をなにより重んじるのに対して、わが国は意図的に忠ということに重きを置きました。 これは結構大きな違いで、親孝行のためなら人様の迷惑になることも厭わない、という精神性を持つ中国に比べ、わが国は公のために尽くす忠こそ大事であるととらえました。 また、明治期、例えば絵画などでは、欧米風の油絵や風景画がもてはやされましたが、そうかといって伝統的な名所図や浮世絵、襖絵などは廃れることはなく、むしろ欧米風の写実的な手法を取り入れながら独自の発展を遂げました。 古くは和魂漢才、明治期には和魂洋才と言って、進んだ外国に学ぶけれど、精神はわが国独自のものを維持する、という宣言を行ったわけです。 ここに、現在...
スポンサーリンク