思想・学問

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仏教と精神分析

昨夜は「仏教と精神分析」という書物を一気に読破しました。 心理学者で精神分析学者でもある岸田秀と、仏教学者の三枝充悳との対談集です。 例によって亡父の蔵書から頂戴してきた物です。 まず驚いたのは、岸田秀の東洋思想に関する無知ぶり。 寒山拾得の故事も知らず、唯識という言葉すら知らなかったのですよねぇ。 私はわが国で学者と言われるくらいの人は、専門が何であれ日本古典、漢文、仏教、儒教、神道などのわが国の精神文化を支えてきた物を一般教養として身につけているものだと思っていましたが、西洋かぶれの心理学者にはそんな物興味がなかったようです。 岸田秀といえば1980年代、世の中のすべては幻想だとする唯幻論や、人間は本能が破壊されているから自我を発達させたなどの説を唱えて颯爽と論壇に踊りだし、ニュー・アカデミズムの先がけとなった人です。 私も学生の頃、この人の著作を何冊か読みました。 当時から、この人の思想が仏教の唯識論に似ていることはたびたび指摘されていましたが、この対談集でもかなり突っ込んで唯幻論と唯識について語られていました。 私は一時期唯識論にはまり、続けて何冊か唯識の解説書のような物を読み...
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新盆

今年は亡父の新盆。 今日は休暇をとって実家である日蓮宗のお寺にお参りに行ってきました。 多くの参拝客が訪れる8月13日、忙しいなかで、母と少し会話してきました。 新住職たる兄は檀家のお経周りで留守。 11月には大規模な亡父の本葬が控え、まだ実家には亡父の気配が濃厚に漂っていました。 亡父の死から5ヶ月で14キロ落ち、母からは痩せてちょうど良い感じになったが、これ以上痩せないほうが良い、と言われました。 そんなことは分かっているのですが、無理に飯を食えば吐いてしまうので、少量でも三食欠かさぬことを心がける他ありません。 どんなしんどいことが起きようと、生きている限り人生は続きます。 自ら命を絶ってしまう人もいますが、放っておいてもいずれは死ぬ命、自ら縮めるつもりはありません。 ある程度生きていれば、肉親や友人など、近しい人の死に目に会うことは避けられません。 長生きすればするほど、そういう機会は増えるでしょう。 お釈迦様は幼いわが子を亡くした母親に子どもを生き返らせてくれと懇願され、村の中から50年間1人の死者も出していない家を見つけ出せば生き返らせよう、と約束します。 しかしどの家を訪...
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お身祓い

今朝、東大寺では、年に一度のお身祓いが行われたそうです。 要するに大仏のお掃除。 作業にかかる前、大仏の魂を抜く法要が営まれた後、白装束の僧侶や信者たちが、あるいはよじ登り、あるいはゴンドラでつるされ、あるいは命綱をつけて大仏を磨き上げたそうです。 作業中はもうもうと埃があがり、この埃をかぶると1年間無病息災だと信じられ、信者たちは進んで埃を浴びたとか。 そんなもの浴びたら喉をやられちゃいますよ。 東大寺には中学三年生の時修学旅行で初めて訪れ、その後何回か訪れています。 そのたびに、奈良時代のわが国の人々が、どんな思いで大仏を造営し、それを拝んだのか、不思議な気持ちになります。 国家の大事業ですから、無駄な公共工事だと思った者も多いでしょう。 また、この事業に関わることで解脱できると信じた者もいたでしょう。 静かに座るあの巨大な仏には、様々な当時の人々の思いが染み込んでいるようで、いつ観ても圧倒されます。 聖武天皇によって743年に大仏建立が発願され、752年、開眼法要が盛大に執り行われたようです。 工事に関わった者のべ260万人、現代のお金で4,657億円もの巨費が投じられたというか...
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偶然性と運命

昨夜、「偶然性と運命」という新書を読了しました。 哲学書のようなタイトルですが、中身は哲学風エッセイというべきでしょう。 偶然とか運命とかいう実証不可能な話題を、古今東西の哲学者がどう考えてきたのか、という先行研究の紹介に多くのページがさかれ、中だるみしました。 当然、誰も偶然とか運命とかいうものの本質をつかんだりは出来ていないのです。 著者の結論は唐突にドフトエフスキーの「悪霊」と「カラマーゾフの兄弟」の小さなエピソードからインスピレーションを得た、邂逅=出会いこそ偶然性とか運命とかいうものに深く関わっている、と述べられます。 確かに出会いには、良い出会いにしろ悪い出会いにしろ、人生を大きく左右する力があります。 まずはどんな両親のもとに生まれるか、どんな友人や恋人にめぐり合うか、偶然とか運命としか言いようがないものです。 人間は幼児の頃、自己と他者という認識が曖昧です。 家族の一員としての自分とか、幼稚園の一員としての自分など、自己と他者という関係性の中に生きており、極めて社会的です。 赤ん坊にいたっては、他者が保護しなければ生きられないわけで、自己と他者という関係の中でしか生きら...
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米国独立記念日

1776年7月4日、米国は独立を宣言しました。 それから236年。 ここ60年ばかり、世界は米国が掲げる自由と民主主義という正義の名の下に支配されています。 独立当時、誰がこのような超大国になると思ったでしょう。 米国は長いこと、モンロー主義という外交政策を採り、他国の争いには干渉しませんでした。 しかし米西戦争やハワイ併合などの経験から、しだいにモンロー主義を破棄、前世紀の二つの世界大戦では主要プレーヤーとして多いに敵を苦しめ、残虐に殺しました。 第二次世界大戦後はヨーロッパの帝国主義国家が次々と植民地を失って昔日の栄光を失うなか、ほとんど全世界を経済力で事実上植民地化していき、現在の繁栄があるわけです。 当然、強い者は妬まれますし、価値観の押しつけが甚だしいので、9.11テロをはじめとする反米勢力も根強く残っています。 わが国は防衛の大半を在日米軍に依存しているため、基本的に米国に追従せざるを得ず、独立国なのに自国の防衛を自国の力でまかなえない、という誠に情けない状況が昭和20年8月15日以降、延々と続いています。 昔、「7月4日に生まれて」という映画がありました。 トム・クルーズ...
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