思想・学問

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特別な瞬間

人生とは不思議なもので、偶然とも縁ともつかない、不思議な瞬間があるものです。 その最たる例は恋愛沙汰、とくに一目ぼれでしょうね。 ある異性(時には同性)を見た瞬間、これは特別な瞬間だと感じ、それまでの生きてきた歩みが一瞬にして再構成され、その異性との未来を明瞭に思い浮かべてしまうわけです。 もちろん、これが片恋であればストーカーに化してしまう可能性がありますが、奇跡的に両思いになれば、その偶然は決して偶然などではなく、縁という必然であると確信するに至るでしょう。 私は残念なことに一目ぼれという経験はありません。 しかしまずは友人になって、飲み仲間になって、少しずつその異性に惹かれていく過程のある一瞬に、一目ぼれと同じような、過去の再構成と未来への展望が同時に開ける特別な瞬間を持ったことは数少ないですが、経験しています。 過去は良いことも悪いことも含めてこの人と出会うためにあったのだという強い確信と、現在のよしなしごとを吹き飛ばしてしまう強い力で、二人が歩むであろう明るい未来への展望を信じてしまいます。 恋は病とかいう、傍から見たらじつに小っ恥ずかしい瞬間でもあります。  それはひとつ恋...
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亡霊

3月5日に父が亡くなってからもうすぐ4ヶ月。 食事制限も運動もしていないのに11キロも落ちてしまいました。 それは良いでしょう。 内科医に褒められていますから。 しかし亡父の蔵書に接するほど、私の心は千々に乱れます。 マルクス全集があったかと思えば茶の本があり、ウェーバーの著作が揃っていたかと思うと漢詩全集や「日本の詩歌」があったりします。 私は父を、思想的には朝日新聞みたいな人で、しかし坊主だから仏教を始めとする東洋思想に強い人と、決めて掛かっていました。 父の膨大な蔵書の山を前にして、私は父が何者であったのか分からなくなりました。 浅草の高給寿司店からバーへと、差しで6時間も語り合ったとき、亡父は私の話を聞こうとして、多くを語りませんでした。 うつ病で長期休暇を取っているとき、奈良や京都に連れ出してくれましたが、やはり亡父は、多くを語りませんでした。 語りつくせぬまま、逝ってしまいました。 私は今、亡父を叱っています。 なぜもっとおのれをさらけだしてくれなかったのか、なぜもっと自分の思いを語らなかったのか、と。 亡父は私の著作やブログを読んで、私の才を愛でてくれていたようです。 ま...
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魔の系譜

数日かけて、亡父の蔵書の中の一冊、谷川健一の「魔の系譜」を読みました。 著者は民俗学者ということですが、内容はエッセイ風の読み物でした。  ここ数日の間にアップした「犬神憑き」・「東北」・「隠れキリシタン」は「魔の系譜」を読み進めるうちに触発されて書いたものです。  亡父はこの世ならぬものへの理解がなく、憑きものだとか魔だとかいうものを毛嫌いしている風でしたので、こういう書物が出てきたことに驚いています。 むしろ私がそういう物への傾斜を深める姿を危惧しているように感じていましたから。 「魔の系譜」は、わが国の怨霊や物の怪、古代の信仰や呪術などを多角的な視点から描きだした興味深い書物です。 でも多分、学者の間では評判が悪いんじゃないかなと思いました。 論文ではないし、当然論理構成は破綻しており、著者の思い入ればかりが鼻につきました。 どこかセンチメンタルな感じが、若書き、を思い起こさせました。 でも書かれた当時の年齢をみてみると、40代後半で、けっこうおっさんなのですね。 後に谷川健一は、この系統の論文を多く物すことになります。 私のような民俗学の素人には、気楽に読める興味深い書物でした...
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犬神憑き

犬神憑き、という言葉を時折耳にします。 他にも狐だとか蛇だとかが憑いている家系があると、主に四国を中心に広く信じられ、現在でもなお差別の対象になっているとか。 犬の魔力で怨む人や家に祟りをなさんとしたした人物が、犬を捕えて首だけを出して土中に埋め、犬が腹を減らしたと見るや生肉などを目の前におき、すると犬の眼は吊りあがって最も魔力を得た瞬間に犬の首を切り落とし、その犬の魔力を自在に操った者に犬神が憑き、代々犬神憑きの血筋となると言います。 現在もなお、犬神憑きと称せられる家ではそうではない家との婚姻が叶わず、葬式にも入れてもらえない、とか。 村八分よりひどい、村十分ですね。 そのため、犬神憑きと称せられる家同士が徒党を組んで行動するため、かえって不気味がられてより差別はひどくなる、というわけです。 でも不思議ですね。 差別するということは犬神の魔力を多少は信じているのでしょうから、差別なんかして、それを怖れたりはしないのでしょうか。 昔、「狗神」という映画がありました。 そこで狗神憑きの者たちが集団自殺するシーンがあって、たいへん怖ろしく感じましたね。狗神 特別版 天海祐希,渡部篤郎,山...
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東北

北朝鮮では多くの民が飢え、場合によっては飢え死にする者も少なくないと聞き及びます。 飽食のわが国からは考えれらないことです。 しかし、過去、わが国にも飢饉が襲い、多くの人々が飢え死にしました。 とくに東北地方において、昔は米の育ちが悪かったせいか、飢饉は頻発しました。 宝暦8年には、八戸藩2万石のうち、18,573石の損害があったと言いますから、ほぼ全滅ですね。 「耳目凶歳録」には、三歳の幼児だも髑髏をもって蹴鞠を学び、とありますから、その惨状は目に余るものであったでしょう。 幼児が髑髏で蹴鞠をするなど、まるでホラー映画です。 「飢歳凌鑑」には、 さる人いわく、大工の曲尺立てみれば上はまがり下直なり。 工に用いるときには高くひくくせまく丸く四角、なにになるにしても自由自在いかさま御上は曲尺を立てたるがごとし。 曲たる中に直あり。 このたびの御吟味直過ならば大分下の迷惑もあるべきに、けんもんのかすみにて眼力も曇り、吟味の先が見分らざるこそ直なり。 これ何事も非理法権転の御政事地獄の沙汰もかね次第、南無阿弥陀仏、助け給え。 という記述が見られます。 これは役人に賄賂をにぎらせてどぶろく造り...
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