思想・学問

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忘れられた日本人

今日は異端の民俗学者、宮本常一の忌日です。 1981年、75歳で亡くなりました。 漂流民や被差別民を主なフィールドとし、柳田民俗学の一派からは無視され続けていましたが、晩年、やっと世に認められるようになりました。 私にとって印象深いのは、「忘れられた日本人」ですねぇ。 名著だと思います。忘れられた日本人 (岩波文庫)宮本 常一岩波書店 昭和14年から日本各地の老人に聞き取り調査をし、様々な職業、身分の人々の生活を生々しく再現し、政治家や文化人などの華やかなものばかりになりがちな歴史の裏に潜む民衆のたくましさを活写して見事でした。 私がとくに印象に残ったのは「土佐源氏」。 馬を引いて荷物を運ぶ馬子という仕事をしていた男が、行く先々で大店や庄屋の奥様と不倫。 それがまた、荒れ果てた神社のお堂で逢引きしたり、森の中で青姦に及んだり、田舎のことで連れ込みなんかなくて、事を行う場所に苦労していたようです。 妻子を捨てて馬の世話と女を可愛がることだけに生きた男の記録です。 そんなことをして50歳を過ぎ、男は失明して何十年ぶりかで妻の元に帰ってきます。 妻は優しく迎え、もう仕事ができないということで...
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1人カラオケ

昔「結婚できない男」というテレビドラマで、1人焼き肉や1人お好み焼きなど、一般的には大勢で食するような食事をあえてする男が話題になったことがありました。 高身長、イケメンの阿部寛がお金もあるのに一向にもてない変人を演じていて抜群に面白かったですねぇ。 近頃神田に、1人カラオケ専門店というのが営業を始めて、40代から50代の中年男性に人気を博しているそうです。 職場の宴会などで好きな曲を歌えば若い者には「知らなーい」などと言われ、無理に若目の曲を選んで豪沈したり、おじさんは苦労しているのですねぇ。 私は精神障害者となってから、一度もカラオケには行っていません。 1人カラオケなら、入るのも堂々と、歌うのも堂々と、精算も堂々と出来ると言う点が受けているんじゃないでしょうか。 でも私は行ってみたいとは思いませんね。 もう一生、職場の宴会でカラオケへ、という流れになっても、行かないと思いますから。 無駄なエネルギーを遣いたくないのですよねぇ。 病気をやって、できないことが増えたとは思いませんが、やりたくないこと、面倒くさいことは増えましたねぇ。 世の中で仕事と言われていること、仕事っぽいことは、...
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与える

東日本大震災以降、盛んに目にし、耳にするようになった言説に、勇気を与えたいだとか希望を与えたいだとかいう物言いがあります。 私はこれらの言い方に、非常に強い違和感を覚えます。 よく時代劇なんかで軍事力も財力も無い腐れ公家なんかが、権威だけを頼りに、「官位を与える」なんて言ってますね。 与えるという言葉は、上の者が下の者に何事かを恵んでやる、というニュアンスがあります。 しかるに、スポーツ選手が「試合で努力する姿を見せて勇気を与えたい」だとか、芸能人が「芸で希望を与えたい」だとか、ボランティアが「絆を与えたい」だとか言っているのは、大傲慢というべきものです。 某ボクシング選手などは、「勇気を与えれるようにしたい」などと発言して、言葉の誤用に加えてらを抜き、滑稽味を加える芸の細かさです。 それを言うなら、「希望を持ってほしい」とか言うべきでしょう。 言葉は変化していくものではありますが、意味があまりにも変ってしまっては、意思の疎通が困難になります。 こだわる、という言葉も年配者と若者の間では逆の使い方をしていますね。 本来の意味は、ある物事に執着してうじうじする、というような、悪いイメージ...
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薮入り

今日、1月16日は7月16日と並んで薮入りですね。 江戸時代、奉公人や女中が実家に帰ることを許された貴重な休日です。 彼ら彼女らを思えば、週休2日の現代サラリーマンは極楽だと言えるでしょう。 しかしヒトラーは、「大衆にこの世を極楽だと思わせることも地獄だと思わせることも簡単だ」と言っています。 要するに心構えの問題でしょうね。 私のような怠け者は、週休三日になっても、仕事が辛い、もっと休みたいと思うのでしょう。 薮入りは閻魔大王が地獄で責め苦を中断する日としても知られており、閻魔堂の開帳などが行われ、縁日が立つおめでたい日でもありました。 実家が遠方の者は縁日に出かけたり芝居小屋や寄席に行ったりして薮入りを楽しんだと伝えられます。 そんな話を聞くと、江戸時代の奉公人に生まれなくて本当に良かったと思います。 まして今は残業も断っていますから、毎日定時帰りです。 最近は17時でもうっすら明るく、なんだか気分が良いです。 これからだんだんと日が伸びるんですねぇ。 寒さのなかにも春が感じられます。 薮入りが 帰ると母は 馬鹿のよう 江戸時代の川柳です。 気が抜けちゃうんでしょうねぇ。 私には子...
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今朝、NHKのBSで、海外向けに製作された「SAMURAI SPRIT」の弓道編と居合道編を見ました。 感銘を受けました。 弓道編はドイツでテレビ番組を表彰する際、ドキュメンタリー部門で優勝したとのことで、侍の精神性には世界の人々に感動を与えることを知りました。 弓道にしても居合道にしても、70歳を超えた達人が、日本で空手や総合格闘技などで20年も修行を続けた外国人格闘家の取材に穏やかな笑顔で答えながら、ひとたび弓を持ち、あるいは日本刀を手にすると、険しい表情でまさに侍としかいい様のない気迫をしめすことには驚きました。 弓道の達人は的を確認した後、照明を消した暗闇の中で矢を射、見事真ん中を射抜きました。 居合道の達人は、本来居合では型を競うだけなのですが、外国人空手家の求めに応じ、竹刀で外国人空手家と三度も勝負に及び、いずれも外国人空手家よりも後に竹刀を抜きながら、わずか2秒足らずで空手家の剣を交わし、なおかつ首や肩切ってしまう離れ業を演じて見せました。 居合の達人は大柄の空手家の半分くらいしかないような、小柄な老人でしたが、剣を操るその技は、見事としか言いようがなく、空手家をして怖ろ...
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