思想・学問

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神秘学

60年代後半から80年代にかけて、米国西海岸発祥のニューエイジ運動が世界を席巻しましたね。 正確に定義付けるのは極めて困難な、曖昧なイメージですが、強いて言えば、霊的・神秘的なものへの親和性を特徴としながら科学的でもあり、禅や道教、チベット仏教などから影響を受け、過剰な消費社会・物質文明に警鐘を鳴らす運動であったように思います。 人間が各々の霊性を高めて、一歩先の平和な世界を築こうという、love&peaceみたいなところもありました。  日本においては幸福の科学がその嚆矢でしょう。 名前からしてニューエイジ運動の重要なキーワードが入っています。 ニューエージ運動は楽天的な快楽主義の側面を持ち、これが幸福と、そして科学はそのものずばり、でしょう。 しかしその後、ニューエイジを掲げて生き残った者は、幸福の科学にしろシャーリー・マクレーンにしろ、金儲けの権化のような人たち。 ちょうど、全共闘の闘士が、社会に出るやそれまでの思想をかなぐり捨てて企業戦士になっていったのと似ています。 私は全共闘の頃は2,3歳だったので、全く影響を受けていません。 しかしニューエイジ運動は長く続いたので、かなり...
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原爆のフェティシズム(物神崇拝)

私は母が四歳のときに長崎で被爆した被爆二世です。 で、母は被爆者手帳を持っています。 これを持っていると、都営交通が無料だったり、様々な恩典が受けられるのです。 母はぴんぴんしていますし、被爆から65年もたっているのですから、そのような優遇措置は不当なものですが、被爆者団体が組織としての圧力を維持するために、なるべく手帳保持者を多く保ちたい、という考えのようです。 また、被爆者の一割は朝鮮半島から連れてこられた人々だと言いますが、彼らには日本政府からの優遇措置はありません。 日本に居住していれば手帳を受けられますが、朝鮮半島に帰国してしまえば、手帳の効力は失効します。 しかも朝鮮半島の人々は被爆後、避難できる親戚もなく、そのまま爆心地近くに留まったため、日本人以上に悲惨な最期を遂げたそうです。 爆心地近くで目をカラスに突かれた遺体があれば、ほぼ朝鮮半島の人だったとか。 遺体を処理してくれる親族や友人がいなかった、ということでしょう。 朝鮮半島の被爆者にとって、手帳はフェティシズムの対象となってしまいました。 日本人被爆者のフェティシズムといえば、千羽鶴でしょう。 被爆から10年後に急性...
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箸礼讃

日本の家庭では、大抵お茶碗と箸は自分の物はこれ、と決まっています。 お父さんは大きくて青っぽいお茶碗に太くて木製の箸、お母さんは赤っぽくて小さめのお茶碗に細めの塗り箸、坊っちゃんはアニメのキャラクターが描いてあるお茶碗に小さなお箸、という具合。 ところが、欧米では、ナイフやフォークが誰のもの、と決まってはいないようです。 大体どれも似たような銀色で大きさも変わりがありませんから、当然といえば当然です。 欧米では、誰それのフォーク、という習慣がないかわりに、マイナプキンが決まっているそうです。 旅行や外出にマイ箸を持ち歩く自称エコな人が近頃頻出しているようですが、欧米ではマイナプキンを持ち歩く人が多いとか。 なんでかな、と思ったら、「身辺の日本文化」という本に、興味深い記述をみつけました。 ヨーロッパで一般庶民がナイフとフォークを使うようになったのは、ほんの200年ほど前からだ、というのです。 それまでは、スープは木製のスプンで、パンやおかずは手づかみで食していたため、非常に手が汚れる。 そのため、ナプキンは必需品で、それぞれ自分のナプキンを持っていたらしいのです。 なんでもロシア革命の...
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ノスタルジア

ノスタルジアというと、郷愁とか、過去を懐かしむとかいう意味で使われますが、元々は精神病を表わす言葉だったそうです。 スイスの精神科医が、異国の前線で戦う兵士たちに蔓延した、抑うつや悲哀感をともなう症状で、これを説明するために、造語をしたそうです。 2つのギリシャ語、「nostos」:帰郷、および「algos」:心の痛み、を基にして造った合成語で、「故郷へ戻りたいと願うが、二度と目にすることが叶わないかも知れないという恐れを伴う病人の心の痛み」というのがその定義です。 しかし今では、ノスタルジアを精神病の一つとして使うことはありませんね。 多くは中高年が若かりし頃の流行りや風俗にノスタルジアを感じること。 しかし近頃、「三丁目の夕日」とか、横浜ラーメン博物館とか、昭和30年代に特化したノスタルジアを国民総出で感じているように思います。 言わば、集団的ノスタルジア。 自分が生まれる前の時代にノスタルジアを感じるというのは、本や映像でしか知らないわけですから、当然理想化が起きているものと想像できます。 歴史学者や歴史オタク、あるいは古典文学者などは、その最たるものではないでしょうか。 司馬遼...
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同居による孤独

最近わが国では、高齢者の孤独死が後を絶ちませんね。 いずれ私も年老い、孤独死するでしょう。 他人事ではありません。 しかしこれはなにも日本に限った現象ではありません。 欧米などの先進国でも、同様の問題が発生しています。 「Heat Wave: A Social Autopsy of Disaster in Chicago」という本がアメリカで出版され、大きな話題を呼びました。 「熱い波ーシカゴにおける社会的災害の検死」というほどの意味になろうかと思います。 内容はシカゴでの数百人にもおよぶ独居高齢者の孤独死を分析したものですが、そこには日本と似た問題と、日本とは異なる問題があります。 一般に日本では、老後は自分の子ども家族と同居して、孫の笑顔に囲まれながら暮らすのが良い、という風潮があったように思います。 その当然の帰結として、老人の独り暮らしは寂しくつらいものだ、という認識が導き出されてきました。 一方米国では、成人した子供と同居する習慣がなく、夫婦のうちのどちらかが亡くなれば必然的に老人の独り暮らしが生まれるものと考えられてきたそうです。 しかし米国では事態はさらに進んで、独居を避...
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