思想・学問

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儀式

日本で大人になるということは、どことなく曖昧な感じがしますね。 それというのも、日本では、大学に進んでも、就職しても、実家に住み続ける人が多いからです。 国によって様々な事情があるのでしょうが、例えば米国などでは、就職しても親元にいるというのは、異様なこととされているようです。 いわば親元を離れるということが、大人になる儀式ということでしょう。  ある社会学者が、日米の大学生にアンケート調査を行いました。 大人として認められる条件を問うものです。 米国はシンプルでした。 仕事をして社会に貢献すること、家事などの家庭生活に貢献すること、教会などの地域社会に貢献すること、この三つです。 日本ではこの三つのほかに、親の面倒をみるだとか、ご近所付き合いをするだとか、親族としての役割を果たすことだとか、色々とややこしい条件をつけています。 これは親と同居するかもしくは近所に住むことが必要であり、ここいらあたりに就職しても親元を離れないことを当然視する理由があるかと思います。 また、同じ学者の調査によると、米国の教育においては親元を近い将来離れることを前提にカリキュラムが組まれており、その際一個の...
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共感覚

共感覚というものをご存知でしょうか。 通常の感覚の他に、別の感覚を感じてしまうことです。 例えば文字に色がついて見えたり、絵を観ると音楽が聞こえたり、食感に形を感じたりすることで、これは極めて鮮烈に感じるそうです。 多くは子どもの頃に自分は他人とは違う感覚を有しているらしい、と気付き、隠そうとする、とのことです。 精神疾患や知的障害と異なり、日常生活に不便は感じないため、障害とは見なされず、病院を訪れる者はまれだということです。 卑近な例でいえば、女性たちの声援を黄色い声などと呼びますが、共感覚者は比喩的にではなく、実際の知覚として、その声を聞くと黄色が見えてしまう、ということです。 有名人では、宮沢賢治や、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルチュール・ランボーなどが知られています。  ランボーに「母音」というソネットがあります。  A は黒、E は白、 I は赤、U は緑、O はブルー  母音たちよ、何時の日か汝らの出生の秘密を語ろう  A は黒いコルセット、悪臭に誘われて飛び回る  銀蝿が群がって毛むくじゃら そのさまは深淵の入江のようだ  E は靄と天幕の爛漫さ、とがった氷の槍  白衣...
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モラル・パニック

いつの時代にも、時代が迫害するものが存在しますね。 ヨーロッパの魔女狩りや同性愛、ジプシー、米国のレッド・パージ、わが国では戦前の共産主義者への迫害。 近頃感じるのは、小児愛への過剰な敵視を感じます。 小児愛への敵意は、小児=18歳未満とされるようになって、極まった感があります。 民法では女性は16歳から結婚できるのに、変ですね。 少年少女の恋愛を扱った文学や映画は数知れず。 また、少女に惑わされる中年男を描いた芸術作品もたくさんあります。  もちろん、小児愛が原因で児童虐待や強姦などの犯罪を犯した者は厳罰に処すべきです。 「戦場のピアニスト」で有名なロマン・ポランススキー監督は米国在住のとき13歳の少女を強姦し、有罪判決を受けましたが、フランスに逃亡。 かの地で市民権を得て堂々と暮らしています。 これは許されないことです。 また、「テス」の主演女優、ナスターシャ・キンスキーとは、彼女が15歳のときから肉体関係を持っていたのは有名な話ですが、こちらは男女合意のもとですから、例え15歳といえども問題ないと思っています。 私は現在の先進国では、小児愛をめぐって一種のモラル・パニックが発生し...
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父親不在

最近NHKで今年の大河ドラマ「江」の宣伝をしていますね。 江は秀吉の命令で三回もほとんど会ったことのない男と結婚させられたとか。 しかしそれは時代標準であり、ご本人はなんとも思っていないようです。 秀吉は江の父親ではありませんが、父親的役割を引き受け、父親として三回の婚姻を進めたのでしょう。 かつて、父親は家族の上に君臨する権威者であることを求められました。 その役割は、社会性や協調性を厳しく子に教え、強さを演じ、優しさを装い、背中で語ることでした。  昔のドラマでちゃぶ台をひっくり返すシーンがでてきますが、あれ、本当にあちこちで見られた光景なんですよねぇ。 何人か子どもの頃にそういう目に会った友人を知っています。 私の父はちゃぶ台をひっくり返すことこそしませんでしたが、怒ると鬼の形相でした。 不登校とかひきこもりが社会問題になるようになって、よく父性の喪失と母性の過剰が原因ではないか、という言説を目にします。 父親は仕事に追われてほとんど家にいない、母親は過剰な愛情を注ぐ、その間子どもは社会性を身につけることが不可能になり、自らに閉じこもる、というわけです。 ことはそう単純ではありま...
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勇ましい

新年早々某新聞に勇ましい対談が掲載されていました。 女性評論家と拓殖大学総長の対談です。 平たく言えば、憲法改正して軍事力・外交力を高めよ、ということですが、暗雲たちこめる現代日本にそれを求めるのは困難なことでしょう。 さはさりながら、聖徳太子の時代から、元寇、朝鮮征伐、日清日露、第二次大戦と、日本は勇ましかったのだから、時代の空気が変われば憲法改正や核武装なんて、あっという間になしとげちゃうんでしょうねぇ。 そういえば前世紀の終わりころでしたでしょうか、アメリカの学者、ハンチントンが「文明の衝突」なる論文を発表し、話題になりましたね。 世界の文明を大きく8つに分けて印象的でした。  すなわち、 中華文明 ヒンドゥー文明 イスラム文明 日本文明 東方正教会文明 西欧文明 ラテンアメリカ文明 アフリカ文明 です。  この中でわが国だけが一国で一つの文明として挙げられ、違和感を覚えます。 中華には入らないんですかねぇ。 西欧文明に対抗もしくは敵対する文明として中華文明とイスラム文明を挙げており、日本文明は孤立しているので、状況しだいで敵対もし、協力もする、とか。 わが国は戦後一貫して西欧文...
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