思想・学問

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両性具有

先日、縁ある人の葬儀に参列しました。 齢94の大往生。 葬儀に湿っぽい雰囲気はなく、むしろおめでたい感じでした。  そこで思ったことは、日本国憲法が高らかに宣言した男女平等の原理は、今だに建前に過ぎないのだな、ということです。 喪主は長男。彼には姉がいますが、姉は喪主になりません。 宴席では、年長の男が上座に座り、年齢順に男が座り、老婆でも一番若い成人男性より下座です。 久しぶりに見た、家父長制の残滓とでもいうべき光景。 私はむしろ、新鮮な驚きを感じました。 人間は不平等なもの。 性差別や部落差別、障害者差別が完全になくなっても、生まれた家が金持ちか貧乏か、両親が円満か不仲か、健康に生まれるか虚弱に生まれるか、頭脳明晰に生まれるか知能低く生まれるか、など、どちらが幸せかは別にして、生来の不平等は如何ともなしがたいものです。 だからこそ、社会制度としての差別はなんとしてでも解消しなければなりません。 その中でも古来、多くの民族で等しく見られるのが、男女差別です。 戦後、少なくとも公の場では、男女差別は無いことになりました。 家父長制から平等主義へ、大きく舵を切ることになりました。 しかし...
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神々の国

昔、森元総理大臣が在任中、「日本は神の国」と発言して大問題になりましたね。 多分先の大戦末期、神風と称して自爆攻撃を行ったり、神国日本は負けるはずがない、と宣伝したため、「神の国」という言い方に拒絶反応を示すようになったのだと思います。   「古事記」や「日本書紀」には、イザナギ・イザナミによって日本列島が形成され、その日本を支配していた大国主命が天照大神に国譲りをして、日本は天つ神の子孫である天皇が支配する国になった、と語られています。 天照大神をはじめとして、八百万の神々がこの国におはしまし、日本人は神々を崇敬しているから「日本は神の国」である、という言い分に、何の不思議もありません。 フィンランドを森と湖の国といったり、タイを微笑みの国といったり、ハワイを地上の楽園といったりするのと同じようなものです。 また、明治維新後、日本は世界の諸先輩方の真似をして帝国主義国家としてのし上がりましたが、その時に日本の支配下に置かれた人々と自国民を差別化する意味も「神国」に込めたため、神の国、という言いようは戦後禁忌となったと思われます。 しかし平安時代には、「神の国」というのは自己卑下する意...
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平城京遷都と畳

近頃平城京遷都1300年とやらで、奈良のあたりがかまびすしいですね。 気持ちが悪い、と悪評さんざんだったせんと君も、インパクトがあって良い、と高評価。 たしかに一度見たら忘れられない面構えではあります。 先日、大仏造営の頃を舞台にしたドラマを観ました。 吉岡秀隆が吉備真備役をやっていて、およそ古代の大政治家には見えない大根ぶりを発揮していました。明らかなミスキャストですね。 そのドラマを見ていて思ったのですが、床が石なのですね。 そして家の中でも木靴を履いています。 衣装もまるっきり中国風です。 わが国が大陸から受けた影響の大きさを感じさせられます。 また一方、遣唐使の廃止が契機になったと言われる国風文化の発展が、どれほど大きな意味があったかを思い知らされます。 赤くない文化大革命だったのではないでしょうか。 「源氏物語絵巻」には、板張りに畳が数枚敷いてある絵が散見されます。 古くは畳は敷布団だったとか。 冬は寒くてしかたありますまい。 「源氏物語」でも、むやみにそこいらにごろんと横になって寝ています。 立って半畳寝て一畳と言いますから、畳が寝具だったことがうかがえます。 鎌倉時代以降...
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ちょんまげ

昨夜「水戸黄門」の新シリーズを見ていて、ずいぶん太くて立派なちょんまげだなあと不思議に思いました。幕末の侍の写真を見ると、頼りないほどまげが細く、さかやきの部分が広いんですよねぇ。黒澤明の「影武者」なんかは、不自然なほど細いまげでしたが、きっと実際は現代人が思うより細かったんじゃないでしょうか。時代劇のまげが立派に過ぎるんだろうと思います。歌舞伎の鬘の影響ですかねぇ。いずれにしろ、文明開化とともに、日本人はちょんまげを捨て、お相撲さん以外はざんばら髪へと移行しました。お隣、李氏朝鮮においても、日清戦争後、日本が朝鮮最初の憲法と言われる洪範十四条を押しつけて、断髪令が施行されました。日本とは違った、伸びるに任せた長い髪を束ねて髷を結っていたのを、西洋風の髪型にしろ、というわけです。日本において、侍は廃刀令には激しく反発しましたが、ざんばら髪はわが国ではそんなに反対されませんでした。しかし李氏朝鮮においては、断髪令は強烈な抵抗にあいます。私の髪を切るならまず首を切れ、と叫んだ学者がいたとか。さらには髪を切ったことを恥じて自殺する者が後を絶たなかったとか。身体髪膚これを父母に受く。あえて毀傷...
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教える

私は大学や研究所で事務職をしてきたので、多くの学者と接しました。 その中で、最も人懐こく、事務職員に親和的だったのは、教育学者です。 多くの教育学者と酒を飲んだり、出張に同行したりしました。 少なくとも私が接した教育学者は例外なく、人懐こかったですね。  面白いことにセクシャル・ハラスメントを起こす学者は大抵教育学者なんですよね。 多分過剰なコミュニケーションを求めて、女子学生を不快にさせるんじゃないでしょうか。 ある著名な教育学者は、陰徳ということをよく言っていました。 古い中国の書物「淮南子」に、陰徳有る者は必ず陽報有り、という文言があるそうです。 陰で人知れず善行をなし、褒美や名誉を求めないでいれば、本人が求めなくても必ず良いことがある、というほどの意です。 ルソーの「エミール」にも同じようなことが書かれていると聞きました。 じつは教育学の大先生(当時私が勤めていた大学の副学長でした)の京都大学への出張に同行したとき、旅費規程上は大先生はグリーン車に乗れるのですが、とびお君と一緒がいい、と言って普通指定席に並んで座り、東京から京都まで、延々話を聞いたのです。(おやじギャグを笑いな...
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