思想・学問

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華夷闘諍

菅総理が廊下でばったり行き会って、偶然、温家宝首相と25分会談したことがニュースになっていますね。 出来すぎた偶然ですが、互いの面子を保つために接触するには、偶然を装うしかなかったということでしょうか。 近頃の中国の振る舞いは我がまま勝手で、中華思想というのは随分気ままなようです。  わが国において、かつては京を中心とする関西が、言わば日本の中華でした。 「太平記」において鎌倉の武家と京都の後醍醐天皇との争いを、華夷闘諍(華=朝廷・夷=鎌倉幕府)と表現しているのは、当時の感覚から言えば当然だったのでしょう。 鎌倉は夷、つまり野蛮な田舎だったわけです。 鎌倉幕府は京都にも匹敵する一大勢力を関東に築こうとするもので、朝廷は大いに危機感を抱いたことでしょう。 鎌倉幕府成立からわずか約30年後に、後鳥羽上皇は関西の武士を集めて幕府を倒そうと承久の乱を起こしましたが、わずか二カ月で敗れ、隠岐に流されてしまいます。 このことは、例え天皇だろうと上皇だろうと、強い者に刃向かえばただではすまないこと、もはや京都は日本の中華ではなくなったこと、を意味していると思います。 後鳥羽上皇の歌を時系列で並べてみ...
思想・学問

二夜、伊勢で宿泊して、夜がとてつもなく深い闇に包まれていることを実感しました。 それは田舎に旅行するといつも感じることで、礼文島に宿をとったときや、霊峰、大峰山や天河弁財天の入り口の天川村に宿泊したときなど、強く感じたことでした。  古来、人が最も怖れ、鬼が支配すると考えたものが、夜の闇でした。  「日本霊異記」に、伊豆に流罪になった修験道の開祖、役小角(えんのおづの)が、 昼は皇に随ひて嶋に居て行ふ。夜は駿河の富士の嶽に往きて修す。(昼は天皇の命令に従って伊豆で修行した。夜は富士山に行って修行した。) と、あります。 もちろん、そんなことは不可能で、これはフィクションと考えるべきですが、当時の人々の感覚では、昼と夜は時間の流れによって繋がっているものではなく、朝焼けと夕焼けによって全く別の世界が現出していたと思われます。 そのような例は枚挙にいとまがなく、例えば今では当たり前の、戦における夜討ちが、堅い禁忌であったことからも知れます。  民俗学者、宮本常一は、名著「忘れられた日本人」に、ある村で、文盲の人たちは底抜けに明るく、誠実で、例外なく時間の観念がなかった、と記しています。つま...
思想・学問

以前、夢日記をつけていたことがあります。 筒井康隆が夢日記をつけている、と知り、その真似をしたのです。 しかし、一カ月ほどでやめました。 夢日記をつけ始めて5日ほどで、毎夜見る夢が、極めて鮮明になりました。 その後、日を追うごとに夢は現実を侵食し、起きているのか、眠っているのか、夢と現実の境界が曖昧になってきて、怖ろしくなってやめたのです。 やめると、すぐに現実は力強く蘇り、夢は勢力を失いました。 その後、私は宮城音弥の「夢」や、ルドルフ・シュタイナーの「神秘学概論」などを読み、夢日記は危険であることを知りました。 ショウペンハウアーは、夢は短い狂気、狂気は長い夢、と評しています。 夢に関しては、予知夢、白昼夢、夢遊病、夢想、性的抑圧と、様々に分析されていますが、その実態は謎のままです。 面白いのは、断夢実験、というレム睡眠が起きた途端に起こす実験です。これを行うと、レム睡眠が後に過剰に増えるそうです。 つまりレム睡眠による夢が不足すると、脳はそれを補おうとするわけで、これは夢が人間が生きていくうえでぜひとも必要だということを表しています。 私は毎朝、夢日記をつけてみようか、という欲望...
思想・学問

悪女正機

早いもので、来週はお彼岸ですね。 現在、仏教行事が主ではありますが、戦前は秋季皇霊祭と言って、神道のお祭りとしての休日でした。 いずれにしても、自然現象にかこつけた行事ですので、仏教だ、神道だと、目くじら立てることもありますまい。  起源も明確ではありませんし、比較的近いご先祖様が行ってきたことを、私たちもやろう、というだけの話です。 仏教と神道といえば、わが国が仏教を受容するに際しては、比較的静かに進んだように見えます。多少の争いはあったにせよ、国を二分するようなことはありませんでした。 聖徳太子の父帝の用明天皇は、「自分は仏法を信じ、神道を敬う」と言って、あっさり両者併存を決めてしまいました。  平安の御代になると、この矛盾が出てきます。 「源氏物語」で、六条御息所の娘が伊勢斎宮となるため伊勢に下向しますが、六条御息所は伊勢神宮を罪深き所と呼んで、娘の身を案じています。 伊勢斎宮と言えば、最高神、天照大神を祀る、最高の格式を持った巫女で、皇族から少女が選ばれるならわしがあります。 仏教から見れば、格が高い神様ほど、罪も深いのです。  ちなみに伊勢神宮の正式名称をご存知でしょうか。 ...
思想・学問

家屋

民主党代表選の決着とともに、猛暑は終わりを告げました。 ここ数日、朝夕は肌寒いほどです。 日本の家屋は夏をしのぎやすいように造られている、とはよく聞くことです。 裏を返せば、寒さには弱いということでしょうねぇ。 障子やら襖やら、紙で外と内を区切ろうというのですから、ずいぶん心細い話です。 現在私はコンクリートで分厚く固められた集合住宅に住んでいるので、冬は暖房がほとんど要らないほど暖かいのですが、夏は冷房なしにはいられません。駅近くに立地しているので、騒音やらプライバシーやらで、窓を開けて涼をとるということは考えられません。  プライバシーといえば、これは訳語がないのですね。 訳語がないということは、わが国ではもともとそういう概念がなく、また、文明開化以降もそのような概念を持つ必要がなかったということでしょうか。 日本家屋の特徴は、部屋と部屋を襖で仕切ること。 つまり大部屋を小さく仕切っただけのことで、開けようと思えば簡単に開けられますし、鍵をかけても素手で破壊できます。 幼児の頃から個室を持つのが当たり前の欧米とは大きな違いです。 「水戸黄門」などでは、旅籠で休むご隠居一行のすぐ隣、...
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