思想・学問

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見る

人は変わったものや珍しいものを見ることが大好きですね。 景勝地から神社仏閣、博物館に動物園。 これらは物見遊山と総称されます。 興味深い本を読みました。 「美術館・動物園・精神科施設」です。 美術館・博物館はともかく、なぜ精神科施設が?と疑問に思われることでしょう。 ヨーロッパ各地では、19世紀に至るまで、精神科施設を動物園のように見学させていた、というのです。 見学者は、鎖につながれた精神病者や、檻に入れられた患者を自由に見てまわり、話しかけたりからかったりする自由があったというのですから、驚きです。 古くは、動物園に畸形や小人などがつながれて、他の動物と同じように見世物になっていたとか。 しかし、物見遊山で精神科施設を訪れている間は、少なくとも患者を死に至らしめるような虐待は発生しにくいでしょう。ある意味、安全であったかもしれません。 今、精神病院には閉鎖病棟があって、自殺や自傷の恐れがある場合には拘束衣を着せて、身体の自由を奪っています。 精神病の自助グループで出会った友人には、数名、閉鎖病棟に入院した経験のある者がいます。口をそろえて、もう二度と、絶対に入りたくない、と言います...
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男らしさ

少年に対して、「男は男らしく」という躾は、よくなされるところです。 男らしい、とはいかなることでしょうか? よく気は優しくて力持ち、と言います。 全般的に、スポーツ選手や軍人・警官などがイメージされているように思います。 近頃流行りの草食系とかお弁当男子とかいうのは、古典的な男らしさから遠ざかっているように思います。 石器時代、狩猟をする男と子育てをする女というふうに分業がなされ、男は男らしさ、を獲得していったのだ、という社会学者がいます。 まことにもっともらしい論です。 しかし男は、生まれつき男らしいわけではありません。 社会規範として、男らしくあることを少年に求めるから、少年は誉められたくて男らしく振る舞う、というのが最初でしょう。 活発で、運動ができ、勉強もでき、将来は軍人になって帝國にご奉公する、というのは戦前のわが国において求められた少年の理想像でした。 そのような少年像を追い求めたのが、大正初期創刊の「少年倶楽部」でした。 そしてそれとは反対に、明治末期創刊の、感傷的な文学少年向けの「日本少年」が芸術を愛したり人生に悩んだりする少年を描きました。 少年が多様な生き物であるこ...
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花嫁人形

冥婚という風習をご存知でしょうか? 日本や中国、韓国などの東アジアに広く見られる、死者の結婚です。 結婚することなく亡くなった息子や娘のため、花嫁人形や花婿人形を寺に奉納して結婚した、と見なしたり、人形を使って実際に結婚式を行ったり、という儀式です。 東アジアでは祖霊信仰が盛んなので、結婚せず、子孫も残せなかった無念の思いを晴らそうということのようです。 しかし実態は、親や親族の癒しのためでしょう。 若くして死んだ者が、祖先になりたい、などという欲求を持っていたかどうかなんてわかりませんし。 仏壇にお供え物をするのと大して変わりません。 ただ、奉納された人形を見ると、なかなか迫力があります。 私は写真で見ただけですが、生前の写真と、一対の花婿・花嫁人形が並べられているのは、そこに強い親族の思いが込められているようで、その情の強さに、戦慄すら覚えます。 ひるがえって現代、アラサーだとかアラフォーだとか、婚活だとか負け犬だとか、ずいぶん結婚しない、あるいはできない妙齢の男女が増えています。 さらに、日本では認められていませんが、同性同士の結婚や、籍を入れない事実婚など、結婚にまつわる事態は...
思想・学問

近頃は、どこへ行っても、誰に聞いても、金がないのオンパレードです。 国立大学等の教育研究機関は、平成16年度の法人化以来、毎年度1%予算が削られ、電気代すらおぼつかない状況です。1%というと、中規模総合大学で毎年5億円もの予算が削減されている計算になります。 その代り、グローバルCOEやら科学研究費補助金やらの競争的資金獲得を目指し、国公私立取り混ぜてパン食い競争を繰り広げているような状況です。しかもそのパンは、日持ちがしないのです。長くて5~6年。獲得できたとしても、すぐに次の競争に参加しなければなりません。 巷間言われているように、そう遠くない将来に、競争力の弱い大学、特に地方の単科大学などは、ばたばたと潰れていくでしょう。 昨今、ゆとり教育は失敗だったとばかり、詰め込み教育が復活しています。 鉄は熱いうちに打て。 暗記できる若いうちにできるだけ詰め込むべきでしょう。 バックグラウンドになる知識がなければ、まともな判断はできません。 それならば高等教育はどうか? 有名国立大学でも、理系の学生の数学や物理などの基礎知識が不足しており、高校レベルの補習をやっているような状況です。 今の...
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妖怪怪異

梅雨があけた途端、例年にない熱波がやってきました。  駆け回るのが大好きな小犬でさえ、猫のようにだらりんとしています。 日本は昔から夏が過酷。日本家屋も夏をしのぎやすいようにできています。 風鈴や金魚など、涼しくなるはずがないものにさえ、涼を求めようとしてきました。 その代表格が、怪談ですね。類似のものでは、肝試しにお化け屋敷。 怖くてひやっとする、というのですから、悠長なものです。 私は、幼い頃から怖い話が大好きで、不惑を迎えてなお、その悪癖は変わりません。 なにしろ7歳のときに初めて作ったお話が、「ドラキュラの歯はない」です。 その後も怖い話をよく作りました。  小学校の頃は、夏休みになると、「あなたの知らない世界」という安いテレビ番組を観ては、震えあがったものです。 幼年期から少年期にかけての私にとって、物の怪や幽霊は、実在するものでした。 古くは、あらゆる日本人にとって、妖怪や霊的存在は実在でした。 凶事が起きれば荒魂(あらみたま)を鎮めるために祈り、和魂(にぎみたま)を招魂して豊作を祈りました。 不遇のうちに亡くなった霊を恐れ、天満宮やら首塚やらを祀って、これを鎮めようともし...
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