その他 酒やめむか
勤労すなわち、金を得む。 金、酒に化けること必定なり。 酒、心地よし。 しかれども、体痛めつけること甚だし。 古人曰く「分かっちゃいるけど止められねぇ」。 我が意を得たりと感得す。 我が酒量多からずといえども過ぎたる宵も少なからず。 我、酒を止めむか、あるいは減らさむか。 朝の我、酒止めむと志す。 宵の我、酒欲すること甚だし。 ついには一杯また一杯。 朝の我と宵の我、別人のごとくなり。 我が愚かなること自覚すれども酒断ちがたし。 主治医曰く、一合にて止めれば薬となり、二合にて止めれば毒にも薬にもならず、三合に至りて毒となるべし。 その言に従いて一杯で止めむと欲すれど、また一杯を注ぎ、ついには三合に至る。 真に真に愚かな仕儀と嘆けども、連夜この愚を繰り返す。 我、酒で命を落とさむか。 主治医宣告す。 酒量を減らざれば二十年のうちに命を落とすべし。 我、失笑せざるべからず。 二十年とはなんぞ。 かくのごとく先を見通すは、鬼神の技なればなり。 主治医の宣告、我をして安心せしめたり。 二十年を経ずして肉体の不調覚えること必定なれば、苦痛逃れたるの一心にて、我、軟弱にも肉体労わること明白なり。 ...