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文学

夜行観覧車

昨夜は当代随一のストーリーテラー、湊かなえの「夜行観覧車」を一気に読みました。夜行観覧車 (双葉文庫)湊 かなえ双葉社 ある地方都市の高級住宅地。 そこでエリート医師が妻に殺害されることから起こる、騒動を描いています。 母が殺人犯に、父が被害者となり、大学生の長男、高校生の長女、末っ子の男子中学生は途方にくれます。 そしてお向かいに住む両親と女子中学生の3人家族と、近所に住む老婆がからんで、物語はドロドロになって展開します。 広大なお屋敷が連なる高級住宅地にあって、お向かいは普通のサイズ。 高級住宅地に住むことに憧れた母親が無理に夫と娘を説得して建てた家で、母親にとっては家がすべて。 中学生の娘は私立中学の受験に失敗したことから、住宅地の住人にバカにされているように感じ、ひどい癇癪持ちになり、週に何度も家庭内で大暴れ。 老婆は老婆で、古くから高級住宅地に住む矜持からか、まわりに干渉します。 隣の芝は青く見える、と申します。  この小説には、嫉妬や怒りなどの感情がごちゃごちゃに詰め込まれ、いやぁな感じが漂います。 謎解きとか本格ミステリーとかいったものではなく、家族や近所のいやぁな感じを...
文学

光源氏にとっての死

今日は好天に恵まれましたが、北風が吹いて寒い一日でした。 事務室の中は暖房が効いて快適でしたが、タバコを吸おうと外に出ると、風がひどく冷たく感じられました。  すっかり晩秋ですねぇ。 そして、もうじき、冬がやってきます。 冬というのは、どこか死を感じさせます。 死と言えば、光源氏の生涯を思い起こします。 前半の華やかな女性遍歴から一転して、ついには出家。 光源氏亡き後も、物語は続きます。 多くの女性と浮名を流し、不遇な時代もあったものの、後に大きな権勢を誇りながら、晩年は最愛の妻、紫の上の死を悲しみ、出家して隠遁してしまいます。 思えば光源氏という人、多くの近しい人を失っています。 母である桐壷更衣、桐壷の母(源氏の祖母)、恋人である夕顔、最初の妻、葵の上、父である桐壷院、父帝の妻でありながら密通を交わし、源氏の子を産む藤壺、やたら嫉妬深い六条御息所、恋敵と言うべき柏木、最愛にして最後の妻、紫の上。 光源氏にとって最初に経験したのが、母、桐壷更衣の死。 この時光源氏、わずか3歳。 人の死がどういうものか分からず、周囲の異様な雰囲気を察し、あやし、と感じます。 要するに、変だ、妙だ、と感...
その他

横綱の暴行

横綱、日馬富士が貴乃花部屋の貴の岩に頭をビール瓶で殴り、怪我を負わせたとして、貴乃花親方は警察に被害届をだした、というニュースが飛び込んできました。 何年前でしたか、親方が若い弟子をビール瓶で殴るなどの暴行を加え、死亡させた事件がありましたね。  力士というくらいで、力は常人とは異なり、とてつもないものだと思います。 しかも相撲協会の顔というべき横綱が、そんなことをするなんてねぇ。 日馬富士と言えば、白鳳とは異なり、土俵上でも礼儀正しく、真面目な印象でした。 相撲という特殊な世界では暴力が容認されているんでしょうか? 被害届をだし、これを問題化した貴乃花親方の判断は正しかったと思います。 大相撲ファンの一人として、これを日馬富士個人の問題に矮小化することなく、角界全体の問題として猛省してほしいものだと思います。
思想・学問

ユートピア願望は諸刃の剣か

パリ同時テロからちょうど2年だそうです。 世に争いの種が尽きることはあるんでしょうかねぇ。 歴史を発展の途上と捉えて、その最終段階に恒久平和が訪れる、と考えるのは、どうしても無理があるでしょうね。 かといって、歴史は繰り返す式の、歴史を円環的に捉えるのもバカげていると思います。 時間は矢の如く一方向に向かっているというのが、人間の捉えられる時間の概念ですから。 恒久平和を求めるのは、どこにもない場所を意味する、ユートピアを求めることと同義だろうと思います。 ユートピアを未来に求める人は、常に希望をに飢えている人でしょうね。 それでも、ユートピアを過去に求める人よりはマシなんじゃないでしょうか。 例えば、縄文時代は階級も差別もなく、自然と一体化した理想社会だった、みたいな。 そんなことを考えたところで、現代人が縄文の昔に戻れるはずもありません。 ユートピアを求める、という精神性には、人間の可能性を切り開き、実現化する動機づけになる、という肯定的側面がある一方、ユートピアを求めるという行為そのものが虚しいことであり、人間に無力感を植え付けるという側面もあります。 理想主義とかユートピア願望...
文学

欲望

小池真理子先生の「欲望」を読み終わりました。欲望 (新潮文庫)小池 真理子新潮社 中学生時代の同級生、類子と阿佐緒、それに正巳という3人をめぐる長い物語です。 阿佐緒は中学生時代から、男なら誰もが欲望を抱くような肉感的な美少女でしたが、彼女の精神は極めて幼稚です。 類子は読書が好きな文学少女で、容姿は十人並み。 正巳は逞しくも美しい少年で、文学少年です。 類子を語り手に、この3人の愛と欲望の物語が綴られます。 ポイントは、正巳が逞しい美青年に成長したにも関わらず、高校時代の事故により、性的不能に陥ってしまうこと。 類子は司書教諭として働きながら、同僚の妻子ある男性教師と肉体だけの関係を断ち切れずにいます。 しかし類子が恋焦がれてやまないのは、不能の正巳。 正巳は肉感的な阿佐緒に惹かれながら、どこか神々し過ぎて、類子に現実的な恋を求めます。 阿佐緒は30歳も年上の、耽美主義的傾向を持った精神科医と結婚し、セレブ生活を送りますが、夫が自分の体を求めないことから、住み込みの家政婦と出来ているのではないかと疑い、勝手に妄想を膨らませ、根拠の無い嫉妬に苦しみます。 類子は肉欲を不倫で解消し、正巳...
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