昨日、ひどく後味の悪い小説を読みました。
「月光」という作品です。
![]() | 月光 (中公文庫) |
誉田 哲也 | |
中央公論新社 |
R18学園ミステリーという触れ込み。
R18というとおり、性描写、残酷描写がけっこうひどいです。
受け付けない人は、これだけでダメでしょうね。
しかし、私には、非常に印象の残る作品でした。
後味が悪いだけではない、力のある作品で、その力が、今日の私を落ち込ませて、仕事も手につきませんでした。
ある作品に接して、その後何日も落ち込むことがたまにあります。
それは小説でも、映画でも。
過去に一番ひどかったのは、高校三年生の時に見た、ベトナム戦争を描いた「プラトーン」。
それを見た翌日、学校で、「どうしたの?」と心配されるほど落ち込みました。
その時は翌日もう一回見るという荒療治に出たのを覚えています。
![]() | プラトーン [DVD] |
トム・ベレンジャー,ウィレム・デフォー,チャーリー・シーン,ケビン・ディロン,フォレスト・ウィテカー | |
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン |
「月光」は、美しい女子高生の死をめぐる物語です。
同級生男子にバイクではねられて事故死してしまった女子高生。
その妹が、姉の死を探るべく、姉と同じ高校に入学するところから、物語は始まります。
姉、妹、加害者の同級生男子、そして、姉が激しい恋に落ちた相手である中年の音楽教師の、それぞれの視点から物語は語られます。
清楚で誰にでも優しく、美しい女子高生。
彼女が放課後、こっそり、誰もいない音楽室でベートーベンの「月光」をひいているところを、中年の音楽教師にみつかり、それが縁で2人は不倫の恋に陥ります。
やがて、体の関係に。
ある時音楽準備室で2人が情を通じているところを、後に加害者となる男子高校生がみつけ、盗撮しまいます。
友人と二人で、その写真をもとに女子高生を強請り、何度も女子高生を犯す男子高校生2人。
妻との生活が破綻している音楽教師にとっては、それは輝かしい恋であり、女子高生にとっても、不倫などという言葉では表せない、純愛でした。
それなのに、何度も犯されて、壊れていく女子高生。
音楽教師にも別れを告げざるを得ません。
やがて男子高校生2人は妹も連れてこいと要求。
それだけは許せない女子高生。
ここで、物語は赦しということが大きなテーマとなっていきます。
あえてネタバレのようなことは記しませんが、誰もが悪いと言えば悪い。
不倫の恋を続ける女子高生も、音楽教師も、女子高生を犯し続ける男子高校生2人も。
もっと言えば、真相を知るためだけに姉と同じ高校に進学した妹も。
しかし、この世を生きていくのに、悪を為さない人間など存在し得るでしょうか。
問題は、その悪に対する赦しであるに違いありません。
しかしこの作品は、女子高生が示した最後の赦しの姿勢をも、台無しにして、終わります。
心理描写、特に女子高生のそれが不足しているというきらいはありますが、悪と赦し、その重いテーマを扱って、この小説はどこまでも私を落ち込ませます。