1936年の今日、安藤輝三大尉ら3人の陸軍将校が処刑されました。
言わずと知れた2.26事件の犯人です。
磯部元一等主計などに比べると、安藤大尉は部下から慕われる人格者だったようです。
磯部元一等主計は、おのれの信念を否定した昭和天皇を呪い、獄中で陛下を叱り続けていたと言います。
2.26事件の失敗の最大の理由は、昭和天皇が自分たちの過激な行動に理解を示してくれると信じたこと。
お人よしですねぇ。
クーデターをやるなら、宮城を占拠して昭和天皇を幽閉し、あくまで自分たちの傀儡とならないとみたら暗殺し、意のままに動く皇族を天皇に立てるべきであったでしょう。
2.26事件というと、三島由紀夫の「英霊の聲」を思い出します。
2.26事件で刑死した英霊、特攻に散った英霊などが代わる代わる現れて依代の声を借り、戦後の天皇に恨みの声を挙げるのです。
などてすめろぎは人となり給いし、などてすめろぎは人となり給いし、と延々と続く恨みの声は不気味な迫力をもって迫ってきます。
英霊にとって天皇はあくまでも神々の子孫でなければならず、昭和天皇の人間宣言は許しがたい暴挙だったのでしょう。
安藤大尉はクーデター失敗を悟ってピストル自殺を図りますが、一命を取り留めて裁判にかけられ、結局刑死しています。
最後まで、貧しい農村を救うためのクーデターであり、それに失敗したことを深く悔いていたようです。
亡くなった柳家小さん師匠、当時東京の部隊の兵隊で、わけもわからぬまま2.26事件に参加させられたそうです。
事件の全貌を知るのはごく一部の将校で、1400名以上の兵隊は演習だと思い込んでいたようですね。
陸軍上層部や一般庶民にはそれら青年将校に同情的であったと伝えられますが、当の昭和天皇が激怒し、「朕が近衛師団を指揮して直接鎮圧にあたる」といきり立ったため、陸軍上層部はトカゲのしっぽ切りのように青年将校を擁護することを止めたようです。
昭和の大事件の首謀者のうちの三名が処刑されてちょうど76年。
76年前と今とでは大きな変化がありました。
生活も便利になりましたし、わが国は軍国主義から自由民主主義になりました。
概ね、良い変化だったのだろうと思います。
しかし世界を見れば、リビアは内戦状態、アフガンやイラクも政情不安。
アジアでは中国が我が物顔で無理難題をあちこちにふっかけています。
恒久平和というのは人間が人間であるかぎり、実現不可能な見果てぬ夢であるかのごとくです。
これから76年経ったら、世の中はどんな風に変化しているんでしょうね。
当然私はこの世の者ではなくなっているでしょう。
しかしできるだけ長生きして、世の中のうつろいを眺めていたいものだと思います。
人間精神の運動ほど面白いものはなく、その発露である様々な活動を眺めることは42年生きてきて全く飽きるということがありません。
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三島 由紀夫 | |
河出書房新社 |