ふたりぐらし

文学

 今朝目覚めたら喉がひどく痛み、咳が止まりません。
 体の節々が痛み、微熱がありました。
 出勤できないことも無いかなと思いましたが、こじらせる前に治したいと思い、仕事を休んで内科に行きました。
 つい一週間ほど前に同じ部屋で執務する後輩がコロナに罹ったことも心配でしたし。
 内科でコロナの検査を行った結果、幸い大丈夫でした。
 抗生物質やら咳を止める薬やら色々薬が出て、朝と昼に飲んだら大分楽になりました。
 ただし、喉の痛みは相変わらずです。

 多少体調が良くなったので、「ふたりぐらし」という小説を読みました。

 今では職業として成り立たなくなった映写技師で脚本家になる夢を捨てきれない40歳の男と看護師で36歳の妻との生活がそれぞれの目線で交互に語られる連作短編集の体裁を取っています。
 看護師の妻が夫を養っており、世間から見れば夫はヒモです。
 しかし二人は仲睦まじく、生活を楽しんでいます。
 家族の始まりとでも言いましょうか。

 そしてそれぞれの親との関係性も描かれます。
 母親はどちらもいわゆる毒母に近い人です。
 その母親との関係の難しさは、私の義母と同居人を見ても分かります。
 同居人は親との関係が悪く、今も面倒は見ていますが、内心嫌っています。
 母を嫌う娘を描くサイドストーリーとしても楽しめる作品になっています。

 この小説を読んでいると、仲睦まじい夫婦というもの、たった二人の世界で生きているようで、二人だけど孤独な感じがします。
 言ってみれば自分とパートナーだけが生身の人間として存在しており、その他の人は存在していないも同然です。

 我が家は子宝に恵まれず、だからこそ二人だけで世間を渡ってきました。
 相互に依存し、傍から見たら気持ち悪いほど相手にべったりです。
 そんな私にとってこの小説の夫婦には共感できる要素が満載です。

 ただし、脚本家を目指してせっせと投稿を続ける点を除いて。

 私は物語作者として生計を立てていきたいと、同人誌に参加したり新人賞に応募したりを36歳まで続けました。
 精神障害を発症して、完全に諦めました。

 この小説に出てくる夫、きっと夢が叶うことは無いのでしょう。
 それもまた共感を呼ぶ要素なのかもしれません。