ふたりの季節

文学

 昨夜は小池真理子御大の「ふたりの季節」を読みました。
 文庫本で130頁ほどの中編。
 1時間もあれば読み終わる、気楽な作品です。

ふたりの季節 (幻冬舎文庫)
小池 真理子
幻冬舎

 読後感は、なんだかさっぱりしているなぁ、というもの。
 この作者には珍しいかもしれません。
 ドラマティックな展開のない、小品だからかもしれません。

 50代半ばの由香。
 忙しい毎日を送っていますが、短い夏休みをとって、カフェでくつろいでいるところ、偶然、35年ほど前に別れたかつての恋人、拓と再会します。
 物語は、カフェで2人が数時間語り合いながら、2人が青春時代を過ごした1970年代初頭を回顧するという短いものです。

 高校から大学のはじめにかけての2人の恋。
 結婚の約束までしながら、これといった理由もなく、2人は別れてしまいます。

 その後30数年。
 それぞれに結婚し、子供も成人しています。

 会話のなかで、由香は離婚し、拓は妻と死別していることが語られます。

 私は1969年生まれなので、1970年代はじめの風俗というか、時代感覚がよく分かりません。
 物語では当時流行った音楽や映画、小説のことが多く語られますが、私にはもう一つ理解できませんでした。

 カフェでの語り合いを終え、また会おうと、互いのメールアドレスを交換する2人。
 忘れ去られていたはずの過去の恋が、また動き出すのでは、という予感を感じさせて、物語は終わります。

 なんとなく、運命だとか縁だとかの不思議を感じさせる、佳品だったと思います。 

 
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