みみらく

文学

 「蜻蛉日記」に、死者と会える島、みみらくについての記述があります。
 死者はみみらくに現れるのですが、現世の人がその島に近づくと消えてしまう、とも。

 いずくとか 音にのみきくみみらくの しまかくれにし 人をたづねん(『蜻蛉日記』)

 この伝説は京都で流行り、京の人々はそういう島があるなら行っていみたいものだ、と思いながら、そこへ向かおうとはしませんでした。
 ここが、恐山の口寄せと大きく異なりますね。

 人々はただ死者を想い、いつかはみみらくに行って再会を喜び合おう、と思っていたのでしょう。
 しかし、近付くと消えてしまう幻の島です。
 上陸は夢のまた夢です。

 現在では五島列島の福江島と考えられ、かつて遣唐使船の国内最後の寄港地だったとか。
 遣唐使は命がけの渡海でしたから、この港を出れば生きて帰れるかわからない、という思いが、伝説を生んだのかもしれません。

 死者への追慕の念は純粋ですね。
 盆になったら坊主が来るのでいくらか包まなきゃならん、ああ、面倒だ、というのが本音としか思えない現在の風習とはずいぶん違います。

蜻蛉日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
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みみらくの島
山下 道代
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瀬戸内寂聴全集〈第15巻〉みみらく・風のない日々・髪 他
瀬戸内 寂聴
新潮社

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