台風が近づく蒸し暑い休日、前田敦子主演のゆるーい喜劇、「もらとりあむタマ子」をDVDで鑑賞しました。
![]() | もらとりあむタマ子 [DVD] |
前田敦子,康すおん,伊東清矢,鈴木慶一,中村久美 | |
キングレコード |
タマ子は大学を卒業すると、甲府でスポーツ用品店を営む実家に帰ってきます。
両親は離婚し、姉は嫁いでいるため、父親と2人の暮らしです。
タマ子は就職活動をするでもなく、ただ飯を食ってはマンガを読んだりして、ひたすらダラダラと過ごしています。
その間、父親の再婚話が持ち上がったり、客の中学生の男の子をアゴで使ったり、何も無いわけではありません。
永遠の夏休みのような日常ですが、前田敦子が醒めて斜に構えたタマ子の感じをよく出しています。
この人、アイドル出身ですが、「クロユリ団地」にしても今作にしても、どこか奇妙な役がお似合いのようです。
![]() | クロユリ団地 スタンダード・エディション [DVD] |
前田敦子,成宮寛貴,勝村政信,田中泰生,高橋昌也 | |
Happinet(SB)(D) |
恋愛映画向きではないようです。
父親が料理好きで、やたらと食事のシーンが出てきますが、変に旨そうです。
これは日本映画の美点の一つでしょうねぇ。
前半、食事中、父親から就職活動をするよう説教され、「少なくとも、今ではない」と言い放つシーンは印象的でした。
また、ラスト近く、ついに父親に夏が終ったら就職が決まっても決まらなくても家を出て行けと言われ、それを承知します。
そして、パシリの中学生とゆるく会話するのですが、自分はどこに行くか分からないけど夏が終ったら町を出ると告げ、中学生からは部活でレギュラーになれそうもないこと、彼女と最近自然消滅したことを聞かされると、タマ子は、
「そんなもんでしょ」
とぼそっと言い、中学生が、
「うん」
と返す短いシーンは、不思議と胸に迫ります。
人生たいてい、そんなもん、ですから。
で、タマ子がどこに行ったのか、就職したのか、また、父親は再婚したのか、何も分からないまま、唐突に映画は終わります。
1年ちょっとのタマ子のモラトリアムはどうなったのでしょうねぇ。
帰省もしくは寄生できる実家があり、そこで安穏と惰眠をむさぼり続けるタマ子が羨ましくもありますが、どういう形でか、モラトリアムは終わります。
就職であったり、結婚であったり。
今や60歳ちかい引きこもりもいると聞きますが、彼らとて、親が死ねば生活保護なりなんなりを自力で勝ち取らなければなりません。
最悪、死という形でのモラトリアムの終りもありましょう。
それにしても前田敦子、怪しい女優として成功しそうな予感がします。