アスペルガ―症候群患者の犯罪

精神障害

 過日、40代のアスペルガー症候群の患者が姉を殺害し、裁判員裁判の結果、検察側求刑懲役16年に対し、懲役20年という極めて重い刑が言い渡されました。

 私はこれに多いに不満です。

 新品のパソコンを欲しがった弟に対し、中古品を買い与えたところ、弟はそれを逆恨みし、犯行に及んだ、というのが検察及び裁判員の見たてです。

 しかしアスペルガー症候群の患者は、他者とのコミュニケーションがうまくとれず、また、相手の気持ちを慮るということが極端に苦手です。
 したがって弟にしてみればそれは逆恨みではなく、純粋に姉に悪意を感じたのでしょう。
 もちろん、だからと言って殺人を犯して良い道理はありません。
 しかし、障害者にはそれなりの配慮がなされなければなりません。
 心神喪失であれば無罪となりますが、おそらくは一生精神病院に閉じ込められるでしょう。
 心神耗弱であれば刑を減じなければなりません。

 裁判員は、このような人物は長く刑に服さなければならず、社会に出ても受け皿が無いことを懲役20年の理由に挙げています。

 これは話が逆です。

 社会に受け皿を作るようにしなければならないに違いありません。

 このような倒錯した理屈がまかり通るならば、わが国が長い年月をかけて築きあげた障害者への刑罰がいかにあるべきかという問題が、ふりだしに戻り、単なる障害者差別を助長することになるでしょう。

 私は自助グループなどで多くの精神障害者と知り合いになりました。
 彼らは私同様、それほど重い症状ではなく、善良で常識的な人々でした。
 しかし症状が重く、ゆえに重大な犯罪を犯してしまう障害者も少数ですが存在します。
 彼らは精神の不調に苦しみ、差別や偏見にもあい、辛い人生をおくってきたであろう人々です。
 病ゆえの犯罪を健常者のそれと同様に扱うことは、絶対にしてはいけません。

 精神障害というのは他の病気と同様、必ずあるパーセンテージで存在します。
 それは人間が多様であることによって種としての生き残りを図った結果です。
 心臓が悪いとか腎臓が悪いとか、精神に障害があるとかいうのは、場合によってはそういう人しか適応できない状況に備えたものだと思われます。
 それら人類全体のリスクを負って生まれてきた人々に、健常者は同情的であるべきでしょう。

 それがやっとたどり着いた人類の叡智というべきです。


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