瀬名秀明が昨年出版した、「エヴリブレス」を読みました。
現実世界と、無限に存在するコンピュータ上の仮想社会との共鳴を描いています。
例えば、私が今日死んだとします。私のこれまでの記事や性格、行動をプログラミングした人口知能(仮とびお)に、現実の出来事や新しく発表される映画や小説の内容をダウンロードして、仮とびおにブログを更新させれば、このブログは、私の死後も、半永久的に続くことになります。
さらに、無数に存在するブログやホームページにも同様のことをし、その内容をリンクさせれば、仮想社会が成立します。
この小説では「BRT」という仮想現実ソフトに自身の仮の姿を投影させ、人口知能に「自動モード」という機能を付加します。もちろん手動で現実の本人が仮の姿を操ることもできますが、放っておけば「自動モード」で「BRT」の人物は勝手に生きていきます。しかも「BRT」には死がなく、人物を消去する機能が意図的に付与されていないので、現実社会の人間が死ねば、必ず、「自動モード」で永遠に生きていく運命にあります。
しかも、現実社会の投影である「BRT」の住民も、自分たちの世界の下位に「BRT」を持つので、階層は無限となり、また種類も無限となります。いわゆるパラレルワールドが成立します。
突拍子もない話ですが、「リング」の後編「らせん」においても、同様の世界が描かれていますし、映画「マトリックス」シリーズでは、仮想社会から現実社会を取り戻そうとする戦いが描かれています。
現在、情報革命の真っ最中と言われます。コンピューターが作り出す社会が、どんな世の中をもたらすのか、空恐ろしい気がします。
この小説では、「BRT」の中だけで、生命が定義付けられ、数式で表される、ということと、「BRT」の自分を他の人格として尊重するあまり、完全に「自動モード」に任せ、一切アクセスしなくなる学者の存在が、印象的でした。
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瀬名 秀明 | |
TOKYO FM出版 |