カラーブックス 良寛さま

文学

 一部を頂戴した亡父の蔵書から、亡父のイメージとは異なる本を見つけました。

 「カラーブックス 良寛さま」です。
 しかも、何度も読み返したらしく、ボロボロです。

 江戸時代後期、名主の跡取りの座を捨てて出家し、僧侶としての出世を求めることをせず、山中の小さな庵で托鉢をして生計を立て、暇があれば子どもと遊び、多くの和歌や俳句を残した、あの良寛の生涯を多くの史跡や書の写真とともに簡潔にまとめた、入門書のようなものです。

 何しろ写真や絵が多いので、絵本を見るような感覚で簡単に読める文庫本です。
 良寛のことを知らない人が読むのに適していると思われます。

 肉を好み、酒も飲み、欲望が旺盛だった亡父ですが、良寛のような、貧しくとも静謐な暮らしに憧れていたんでしょうかねぇ。
 それは身の程知らずでは?

 良寛というと、特攻兵が好んで口にしたという辞世の句が有名ですね。

 散る桜 残る桜も 散る桜

 特攻隊の心境そのまんまだったんでしょうねぇ。

 良寛さんらしいといえば、

 この里に 手毬つきつつ 子どもらと 遊ぶこの日は 暮れずともよし

 というのが、子どもと遊ぶことを好んだという良寛らしいですねぇ。
 子どもの心に仏性を見ていたようです。

 でも子どもって、本質的に残酷で邪悪なものだと私は思っています。

 良寛のような世を捨てた暮らしができれば最高ですが、それは凡人である私には叶わぬ夢。
 旨いものも食いたいし、酒も飲みたいし、きれいなお姉さんと遊びたいし、世の中で生まれる新しい物語や芸術作品にも触れたいし、私は欲望が服を着て歩いているような存在ですから。

 良寛さんよりもはるか昔、平安末期に活躍した西行法師も、

 世の中を 捨てて捨てえぬ 心地して 都はなれぬ 我が身なりけり

 
と、嘆いていますからねぇ。


 現実社会を鉄の意志で泳ぎきった亡父には、世捨て人の乞食坊主に憧れる一面もあったんですねぇ。

 わが父ながら、奥が深い人だとあらためて感じました。

良寛さま (カラーブックス (691))
小松 正衛
保育社


良寛こころのうた―良寛詩歌三百六十五日
全国良寛会
新潟日報事業社


良寛 こころのうた―良寛詩歌三百六十五日〈第2集〉
全国良寛会
新潟日報事業社

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