カルトと権力

映画

 8月も残すところあとわずか。

 宿題を終えていない子供たちの断末魔の叫びが聞こえるようです。

 私は小学生の頃、夏休みの宿題は7月中に終らせていました。
 そうでないと8月が楽しめませんから。

 今思うと驚くのは、絵日記も終らせてしまったこと。
 未来を描くわけですが、当然嘘八百を並べることになります。
 私は嘘八百を並べるのが得意でした。

 8月中にある程度年休を消化しようと、今日、用も無いのに休暇を取りました。
 めずらしく自室を片付け、掃除などしました。

 その後は、恒例のDVD鑑賞です。

 「レッド・ステイト」というのを観ました。

 社会派ドラマであり、アクション映画であり、監禁ホラーの要素ありの、複雑な作りの映画です。



 米国のキリスト教原理主義者も眉をひそめる超原理主義のカルト教団をめぐって、物語は進みます。

 カルト教団のリーダーである牧師は、同性愛者の権利を認めようという運動に強く反発し、同性愛や肛姦に反対するデモをしたり、教会でわずか20数名の信者に説教したりして、日々を過ごしています。
 
 ある時、信者の女がインターネットに男3人と自分とで4Pを楽しみたい、という書き込みをします。
 それを観た若い男3人が女の家へと向かいます。
 しかし、睡眠薬入りのビールを飲まされ、昏睡。
 3人は乱交を望んだ罪で、カルト教団の教会で公開処刑されることになります。

 しかし、3人が乗った車が保安官の車と接触事故を起こしたため、3人が乗っていた青いボルボを探して保安官が教会を訪れます。

 その夜は、3人の他に、同性愛者が一人信者によって公開処刑されており、3人は保安官の訪問をきっかけに脱走を試みます。

 3人を逃すまいと信者が発砲。


 銃声を聞いた保安官は応援を要請しますが、その場でカルト信者によって射殺されてしまいます。


 カルト教団は多数の自動小銃やライフルで武装しており、その先は米国警察との激しい銃撃戦になります。

 現場指揮官は携帯で、本部からの恐るべき指示を与えられます。

 すなわち、人質も含め、女子どもにいたるまで、全員射殺せよ、と言うのです。
 口封じでしょうか。
 カルト教団もひどいですが、権力を握る警察も相当なものです。


 しかし現場指揮官は、最後にこの世の終末の合図である音楽を聴いたから、という理由で武器を捨てて出てきた牧師と信者たちを殺害せず、逮捕します。

 この音楽、キリスト教超原理主義者をだまくらかそうと考えた音大生の悪戯に過ぎませんでした。
 しかし悪戯のおかげで、何人かは助かります。

 教祖は独房で賛美歌などを歌って過ごす哀れな余生を過ごすはめになります。

 命令に従わなかった指揮官は上司数名に事情聴取されます。
 その時、現場指揮官は、「なぜ人質まで射殺するよう命じたんです?」と質問します。

 すると仕立ての良いスーツを着た上司は可笑しそうに、「面倒くさかったんだよ」と応えます。
 この作品のなかで、最も見るべきセリフです。

 人命尊重とかなんとか綺麗事を並べたところで、権力を行使しているのは所詮生身の人間。
 面倒臭いから皆殺しにしてしまえ、という判断を下したエリートを責める資格は、私にはありません。

 生き残った者がどういう発言をするか分からず、ましてマスコミは第1権力に厳しい批判の眼を向ける第4権力です。

 皆殺しの命令は、マスコミに情報を与えない、ということが第一の目的だったと思われます。

 私たちは今、自由民主主義を掲げる国に住み、概ね善良な政治家や警察官や役人に権力の行使を委ねています。

 しかし、一たび事が起これば、権力を握っている者がどういう判断を下すか分かりません。
 この平和なわが国においてさえ、権力者の行動には目を光らせなければなりますまい。

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