「ガラス玉演戯」とも「ガラス玉遊戯」とも訳されるドイツのノーベル文学賞受賞者、ヘルマン・ヘッセの畢生の大作。
ヘルマン・ヘッセというと、少年の成長や挫折を描く青春文学の作家、というイメージが強いですが、「荒野のおおかみ」あたりから、急激に文明批判や精神世界への言及を強めていきます。
その行きついた果てが、「ガラス玉演戯」でしょう。
未来、芸術と数学と瞑想を伴って行われる究極の芸術、ガラス玉演戯が生まれます。
主人公クネヒトはガラス玉演戯の名人となります。
クネヒトの意味はしもべ。
究極の芸術の名人が、しもべ。
それだけでも、なんだか意味ありげです。
クネヒトは、もはや内面の嵐に突き動かされて社会から脱落することはありません。
瞑想の力によって社会的な秩序と内面の自由を調和させることができるからです。
学問と芸術、論理と感性を同時に表現し、調和させ、統一することを可能にする世界語、それがガラス玉演戯であり、クネヒトはその最高位にまで上りつめるわけです。
しかしこのガラス玉演戯の神聖な世界に対立するものとしての俗世の存在が、主人公を更なる調和と統合に向かわせます。そして・・・。
結末は人によって評価が分かれるでしょう。
しかし、ヘルマン・ヘッセの作品をたどっていけば、彼は常に生きる道を模索し続けてきたことがわかります。
そのために繊細で傷つきやすい主人公の少年を、名作「車輪の下」では死に至らしめています。
それもまた、人生が行きつく道の一つだからでしょう。
「ガラス玉演戯」は長いこと絶版になっており、ヘルマン・ヘッセを愛読していた中学生の頃に読むことができませんでした。
それだけに、おじさんになって読んだ「ガラス玉演戯」は、強烈な印象で、私をかつての神秘主義にはまっていた頃に引き戻したのです。
世に最も読まれている「車輪の下」などに比較すると、「ガラス玉演戯」はやや難解です。
ゆっくりじっくり読むことをお勧めします。
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Hermann Hesse,高橋 健二 | |
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