ガレージ

文学

 私が車を駐車しているのは、マンションのすぐ横に建つ立体駐車場です。
 夏、暑くならず、雨が降っても汚れないのは良いですが、車を出すとき2分ほど待たなければなりません。
 また、私の前に出そうとしている人がいれば、当然その分待ち時間は長くなり、軽くストレスです。

 私はマンションを購入する際、一戸建ての購入は全く検討しませんでした。
 防犯上も危ないし、庭なんかあっても手入れする気はないし、メンテナンスも面倒だと思ったからです。
 ただ一つ、一戸建てで良いなと思ったのは、ガレージを設置できることです。
 できればアメリカ映画に出てくるような、三台も四台も駐車できるような、大きなガレージが欲しいと思いました。
 車は一台だけで、自転車やら、発電機やら、芝刈り機やら、チェーンソーやら、雑多なメカニック的なものが置いてあり、少し油のにおいがする町工場のような空間。
 私は書斎より、そんなガレージで、読書したり、物思いにふけったりしたいと思ったのです。

 じつはそれには、理由があります。
 中学生の頃読んだ日野啓三「天窓のあるガレージ」に影響されたのです。

 車がないガレージを自分の空間と定めた少年。
 天窓から降り注ぐ光を浴びて、異界との交感を夢見る無機質で幻想的な小説です。

 でも多分、夏は暑いし冬は寒いしなかなかガレージで快適に過ごすことは難しいでしょうね。
 そのイメージは、ドフトエフスキーでいえば地下室、江戸川乱歩でいえば屋根裏にあたるのでしょうか。
 狭く閉じられた空間にこもって、おのれに沈潜していくというイメージは、なんとも魅力的なものです。

 せめては押入れにでもこもって、冥い瞑想にふけるとしますか。

 
 
 
天窓のあるガレージ (福武文庫)
日野 啓三
福武書店
地下室の手記 (新潮文庫)
江川 卓
新潮社
屋根裏の散歩者 (江戸川乱歩文庫)
江戸川 乱歩
春陽堂書店
屋根裏の散歩者〈完全版〉 [DVD]
江戸川乱歩,薩川昭夫
ジェネオン エンタテインメント
エロチック乱歩 屋根裏の散歩者 完全版 [DVD]
江戸川乱歩,井土紀州
アートポート

  

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