狂気の密室劇、「クレイジズム」を観ました。
巨額の箪笥預金をしている独居老人から金をうまいこと盗み出した若い男女五人。
真ん中にリングがある小ホールに逃げ込み、金の分配を始めます。
実行犯の男二人が30%ずつ、見張り役の女二人が16%ずつ、運転役の男が8%と端数、というあらかじめ定めた取り分を分けていきます。
しかし、運転役の男が取り分が少ないことに不満を漏らし、5等分にしなければ警察に通報する、と脅します。
やむなく5等分し、逃げようという段になって闇金融から多額の借金を抱える実行犯の一人がぶちきれ、スパナで運転役に殴りかかります。
そして殺害。
そこから生き残った4人の欲がぶつかり合い、さらにはこっそり独り占めにしようと仲間割れを誘う男の誘導のままにみなが疑心暗鬼に。
さらにはこの計画を知っていた闇金融が金を横取りした上で警察に通報しようと画策。
もはや分けの分からない欲望まみれの人間模様が繰り広げられます。
映画のほとんどを小ホールだけで描き、異常な緊張感と、やるせないいやぁな雰囲気が映画を包みます。
人間、欲が強いやつは扱いやすいもので、損得関係なく信念で動くやつは面倒くさいものです。
しかし、登場人物それぞれに、借金漬けだったり、母親が高額な医療費のかかる病気だったり、何の店だか知りませんが開店資金が欲しかったりと、動機は様々ながら強い金銭欲を持っていて、自分だけが儲かればよいと考えていると、それはそれで扱いにくく、仲間同士の修羅場とならざるを得ません。
乱世のならいを見れば、親だろうが子だろうが兄弟だろうが恩人だろうが、骨肉の争いを繰り広げるのは人の性。
悪人ばかりの中で独り善人であろうとすれば、利用されて殺されるのが関の山。
それは現代日本でも行われる資産家の相続争いをみれば明らかです。
この映画はそういう悲しい人間の欲望を描いて見事です。
よく性善説とか性悪説とか言いますが、どちらも間違っていますね。
善も悪も併せ呑むのが人間の自然。
言わば性自然説とでも言うのが本当のところでしょう。
「アンタッチャブル」で多くの犯罪を犯し、殺人も犯したイタリアン・マフィアの大親分、アル・カポネが、特等席でオペラの悲劇を観て涙を流す場面が印象的です。
時には平気で人を殺し、時には芝居で涙を流す。
人間というもの、面倒くさいですねぇ。
私はその面倒くさい人間の中でも、破格に面倒くさい部類でしょうねぇ。
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