今日は映画館に足を運びました。
「リング」で世界を恐怖に陥れ、Jホラーに新しい歴史を刻んだ名匠、中田秀夫監督の最新作「クロユリ団地」を観るためです。
先ごろAKB48を卒業して新境地を目指す前田敦子が複雑な役柄を演じて秀逸です。
古い団地、クロユリ団地に引っ越してきた両親と長女、弟の4人家族。
前田敦子は長女を演じ、クロユリ団地から程近い介護の専門学校に通っています。
引越し当日、隣の独居老人へ挨拶しに行きますが、どうも様子が変です。
翌朝から、隣家の奇妙な物音に悩まされることになります。
ある時、長女は団地の砂場で一人で遊ぶ幼い男の子と友達になります。
そして隣家の独居老人は、孤独死していたことが判明。
長女は独居老人の霊に苦しめられていると信じ込みます。
独居老人宅の片付けに着た遺品整理会社の青年と知り合った長女は、その青年の知り合いの霊能者によって、怖ろしい真実を突きつけられます。
前田敦子がだんだんおかしくなっていき、生気を失い、廃人のようになっていく姿は見事でしたが、どうしてもAKB48のセンターというイメージがつきまとい、感情移入しにくい感じがしました。
彼女はこれから長いこと、AKB48のセンターだったという過去に苦しめられることでしょう。
もっとも、そうであったからこそ、メジャーな映画の主役に抜擢されたことも事実ですが。
この映画は、基本的に日本の怪談話の伝統を背負っているように見受けられます。
死霊に魅入られた者が衰えていく、というパターンですね。
違うのは、死霊が物理的な力を行使すること。
「四谷怪談」にしても「牡丹燈籠」にしても、死霊はただ出てきて脅かすだけで、物理的な力は行使できず、それを見た者が勝手に気が触れたりなんかして、破滅していきますから。
「リング」ほどの高い完成度は期待できませんが、それでも並みのホラー映画とは異なり、格調高く、人間心理を巧みに描き、この世の者とこの世ならぬ者との交流を描いて見事です。
この世ならぬ者が知らぬ者で、おのれに災いをなすと知れば、それはオカルト映画に見られる悪魔と変わるところがありません。
また、この世ならぬ者が親しい者で、自分を守ってくれるのであれば、安っぽいお涙頂戴になってしまいます。
この世ならぬ者が自分に近しい者で、しかも災いをなすとなったら、これほど怖ろしい状況はありますまい。
結局この世とあの世は交わらぬほうが良く、不幸にして接点を開く扉を開けてしまったならば、早々に閉じるほかありますまい。
まずまずの出来と観えました。

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