カナダの鬼才、クローネンバーグ監督の難解かつスタイリッシュな映画をDVDで鑑賞しました。
「コズモポリス」です。
主人公は28歳の若さで投資家として巨万の富を得た美青年。
資産家の娘で詩人でもある妻を得ながら、売春婦や部下の女と遊びまわるプレイ・ボーイでもあります。
その金持ちぶりは笑っちゃうほど。
リムジンを乗り回すなんて序の口で、毎日健康診断を受けるは、旧ソ連製の爆撃機を買っちゃうは、そりゃないでしょう、という感じです。
この映画は、その美青年がある日、ニュー・ヨークを突っ切った先の町にある幼い頃から行きつけの理髪店へリムジンで向かうところから始まります。
ニュー・ヨークはその日、米国大統領の訪問があったり、有名歌手の葬儀があったり、わけの分からんデモがあったりで大渋滞。
リムジンは歩く早さでしか進みません。
そのリムジンに部下だの売春婦だの、理論主任と称する哲学者めいたおばさんだの、はては有名歌手の死を知らせるために太っちょで黒人のブラザー?だのが乗り込んできては、難解で哲学的な会話を繰り広げます。
その間妻とレストランで食事を摂ったり売春婦や部下とセックスしたり。
さらには人民元の暴落で破産必至であることを知り、自分を付けねらう男の古ぼけたアパートに乗り込みます。
リムジンでは恒例の健康診断が行われ、いつもとは違う医師に、「前立腺が非対称だ」と告げられます。
健康に害があるわけではありませんが、対称で美的な世界を追い求めてきた彼には我慢がなりません。
また、データと自然法則と人間の欲求とを加味すれば完璧に予想できるはずの通貨相場が、人民元のおかしな動きで予測できなかったことに、ひどく打ちのめされます。
朝オフィスを出て理髪店に着いたのは夜。
さらに残酷な運命を、自ら手繰り寄せてしまうのです。
私が初めてクローネンバーグ監督の作品を観たのは中学生の頃。
「ビデオ・ドローム」という幻想的な作品でした。
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ジェームズ・ウッズ,デボラ・ハリー | |
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン |
興行的には奮わなかったようですが、批評家などからは高い評価を受けたと聞いています。
それ以来、常に気になる映画監督の一人です。
「ザ・フライ」という作品は蠅男を描いたホラーとして大ヒットしましたね。
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ジェフ・ゴールドブラム,ジーナ・デイビス,ジョン・ゲッツ | |
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ジャンキーで両性愛の作家にして、妻をウィリアム・テルごっこのために撃ち殺してしまったという伝説の作家、バロウズの「裸のランチ」の映画化に成功し、私にとって1990年代最高の作品です。
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デイヴィッド・クローネンバーグ,ウィリアム・バロウズ | |
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原作:ウィリアム・S・バロウズ,音楽:ハワード・ショア/オーネット・コールマン | |
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鮎川 信夫 | |
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この監督が生み出す独特の映像世界は好悪が分かれるようで、はまるととことんはまります。
私もはまっちゃった一人です。
「コズモポリス」は情報化と資本主義が高度に発達した現代社会への黙示的な警鐘という面と、傲慢で美しい青年の破滅の物語という面の二つがあり、どちらの見方をしても面白いと思います。
多分何度か繰り返し観ちゃうでしょうねぇ。
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ロバート・パティンソン,ジュリエット・ビノシュ,サラ・ガドン,サマンサ・モートン,ポール・ジアマッティ | |
松竹 |
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Don DeLillo,上岡 伸雄 | |
新潮社 |