重たい雪が積もった道を歩いて、すぐ隣のGEOでDVDを借りました
「コーヒーが冷めないうちに」という映画を観ました。
とある喫茶店。
その喫茶店のある席に座ると、望むままに過去に戻ることができます。
ただし、面倒くさいルールがあります。
・過去に戻ってどんなことをしても、未来=現在は変えられない。
・熱いコーヒーを淹れて、完全に冷める前にコーヒーを飲み干さなければ、帰れない。
・その喫茶店を訪れたことがある人のもとへしか帰れない。
その喫茶店を訪れる様々な人の人生を垣間見ることできる映画です。
タイムトラベル物のSFと観ることもできますが、内容は、ファンタジーですね。
主演の有村架純の好演が光ります。
脇を固めるのは、薬師丸ひろ子、石田ゆり子、松重豊、波留、吉田羊などの豪華俳優陣。
この映画、悪い人は一人も出てきません。
全員良い人です。
邪悪な殺人鬼などが登場するホラーやサスペンス、ダークファンタジーなどを好んで観てきた私ですが、最近嗜好が変わってきたように思います。
そういえば、村上春樹の「風の歌を聴け」・「1973年のピンボール」・「羊をめぐる冒険」の、鼠三部作と言われる小説に、通称鼠という人物が登場し、この人は趣味で小説を書いています。
その小説作法は、誰も死なない、セックスシーンは決して書かない、というもので、感銘を受けた覚えがあります。
今、私はそういう映画を求めているのかもしれません。
いっぱい死んで、これでもかというくらいセックスシーンがある映画ばかり観てきたのにねえ。
これを成長と見るか、精神の衰えとみるか、私には分かりません。
コーヒーが冷めるまでの短い時間に、過去に戻った人々は、現在を変えられないことを嘆きません。
むしろ、未来に向かって力強く生きていく決意を抱いて戻ってきます。
子供っぽいと言えば子供っぽい映画ですが、なぜか、印象に残りました。
時を遡ることができたなら、と願うことは、誰にでもあると思います。
あそこで違う決断をしていれば、という後悔は、私にもあります。
物語を作る人になりたいと思ってせっせと小説を書いて、就職などせず、野垂れ死にしても良いから続けていれば、と思うことは今もよくあり、そのことが私を苦しめます。
作る人ではなく、享受する人になってしまいました。
しかし、食えなくなることへの恐怖から、私は平凡なサラリーマンになりました。
そのおかげで、マンションのローンを組み、完済しました。
車も、5年ぐらいで買い替えています。
共働きで子供がいないおかげで、経済的に困ったことはありません。
しかし人間それだけでは、生きていけないものです。
作る人になれなかった私は、せめて良い享受者になりたいと思います。